近頃は物騒だから、と帰りはいつも赤屍さんが車で迎えに来てくれる。 確かに赤屍さんには誰も敵わないだろう。 怪我してもすぐに治っちゃうし。 ガラスが体内に入っても武器に変えちゃうし。 剣で次元を切り裂いちゃうし。 ヘリコプターから飛び降りても無傷だし。 蛮ちゃんのスネークバイトを素手で止めちゃうし。 死がイメージ出来ないから死なないし。 改めて最強だと思う。 最強にして最凶。 身長186p体重86sの魔人が私の恋人である。 身長に対して体重が重めなのは、筋肉の重さのせいだろう。 それだけ体重があっても音をたてずに移動出来るのだから、本当に人外魔境な男だ。 気配も足音もなく真後ろに立たれた時などは、未だにビビって心臓が止まりそうになる。 かつて仲介屋のヘヴンさんに、男女の愛がわからない、男と女が存在しているのは遺伝子をシャッフルするため、なんていう感じのことを言ったらしいが、とても信じられない。 むしろ、そんなクールな赤屍さんを見てみたかった。 “獲物”を見つけた魔人は、それはもう、恐ろしい勢いで求愛してきたからだ。 今までの反動が一気にきた感じと言えばわかるだろうか。 とにかく恐ろしいの一言だった。 それが今では恋人同士。 何があったの?とよく聞かれるが、どうもこうもない。 押しきられてほだされてしまったのだ。 怖い、怖い、と怯える私に、赤屍さんは実に細やかな愛情を示してくれた。 病んではいるが、その深い愛情は本物だった。 今まで誰にもそこまで執着されたことがなかった私は、戸惑い、恐怖したが、結局は流されてしまったのである。 溺愛される心地よさを知ってしまったが最後、沼に沈んでいくように脱け出せなくなった。 そうする内に、こちらにも愛情が芽生えて、今ではすっかり相思相愛の仲に。 銀ちゃんなどは、未だに信じられないものを見るような目で私達を見るけど。 今、私はとても幸せだ。 「赤屍さん、大好き。愛しています」 今日も車で迎えに来てくれた赤屍さんに抱きついてそう言えば、力強い腕で抱きしめ返してくれるから。 「私も愛していますよ、聖羅さん。貴女だけを、心から──永遠に、ね…」 |