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春色ルージュなどのコスメのCMに加えて、UVケア商品のCMが増えてきた。
桜も各地で満開になっていることだし、いよいよ春本番といった感じだ。

「土曜日にお花見に行きませんか」

赤屍さんに誘われたのは木曜日のことだった。
日曜日は花散らしの雨になるだろうから、と。
断る理由はどこにもなかった。

本当は4月から新しい部署に移動になって憂鬱だったのだが、楽しみが出来たお陰でなんとか初日を乗り切ることが出来た。
金曜日の間は、同期の子に「顔がニヤけてる」と言われて大変だったが、それも仕方のないことだと思う。

そして、土曜日。

「すみません、お待たせしちゃって」

「大丈夫ですよ。私も先ほど着いたばかりです」

待ち合わせ場所に行くと、既に赤屍さんは来ていた。
いつもの黒コートではなく、春らしい薄手のロングコートを着ている。
黒尽くめなのは相変わらずだが、この人も季節によって着るものが変わるのだなと思うと新鮮な気持ちだった。

「お弁当を作って来ましたから、あちらで食べましょう」

「ありがとうございます。実は期待してました」

立場が逆じゃないかと言われそうだが、私達の場合、これでいいのだ。
今度お礼にお気に入りのダイニングバーに一緒に行こう。
そう決めて、赤屍さんと共に桜並木を歩いていく。
淡い色の桜の花がどこまでも続いていて、幻想的な雰囲気だ。

「満開ですね」

「ええ、ちょうど良い時期に来られて良かったですね」

「すごく綺麗」

「貴女も綺麗で可愛いですよ、聖羅さん」

赤屍さんは平気で恥ずかしいことを言う。
私の頬はきっと桜色に染まってしまっていることだろう。

「恥ずかしいです…」

「正直な気持ちですが」

「もっと恥ずかしいです…」

「おやおや」

クスクスと笑われて、意地悪な赤屍さんの腕に抱きついた。
彼は平気な顔で、私をエスコートしてくれる。
本当にこの人には敵わない。

そうする内に空いているベンチを見つけ、二人で並んで座った。

膝の上にお弁当を広げる。

「冷たいお茶にしましたが、大丈夫ですか?」

「喉が渇いたのでちょうどよかったです。ありがとうございます」

毎回思うことだが、赤屍さんは料理が上手だ。
一人暮らしが長いらしいから、家事は出来て当然なのかもしれないが、それにしたってレベルが高い。

「どうです?お口に合いましたか?」

「はい、どれもとっても美味しいです」

実際、お店の花見弁当も真っ青の美味しさだった。

「デザートはババロアですよ」

「わあい!」

思わず子供のように喜んでしまう。
赤屍さんの作るババロアは私の大好物の一つなのだ。
今日はお花見ということで、桜のババロアだった。
甘酸っぱくてとても美味しい。

「来年も再来年も、ずっと、ずっと、一緒にお花見出来たら嬉しいです」

「おや、先に言われてしまいましたね。私も同じ気持ちですよ」

ずっと、ずっと、一緒にいましょう。

お互いの想いを確かめあった私達を、桜の花達が見守っていた。


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