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「おはようございます、聖羅さん」

「…おはようございます…」

どうしよう。恥ずかしい。
赤屍の家にお泊まりしたら、うっかりお昼近くまで寝こけてしまった。
さすが、10万もするマットレス。寝心地の良さが半端じゃない。
自分の部屋のものとは大違いだ。

「よく眠れたようですね」

「それはもうぐっすりと」

「疲れはとれましたか」

「めちゃくちゃすっきりしてます」

一週間の間に蓄積していた疲労がぶっ飛んだ感じだった。
ああ、それにしても恥ずかしい。

「ブランチを用意しましたが、食べられそうですか?」

「いただきます」

「では運んできますね」

そのままで、と言われてベッドにステイさせられる。
ここに運んでくれるということなのだろう。
何から何まで至れり尽くせりだ。

聖羅が眠っている間に既に準備しておいたらしく、赤屍はすぐに戻ってきた。

「さあ、どうぞ召しあがれ」

「わあ…!」

聖羅は思わず感嘆の声をあげた。

表面はきつね色で、香ばしいかおりを漂わせているグラタン、
食べやすい大きさにカットした野菜とフルーツがゴロゴロ入っているサラダ、
それに、粉砂糖がかけられた上からバターを乗せた、ふわふわのスフレパンケーキ。
運ばれてきたトレイの上に乗ったブランチのメニューに、瞳を輝かせる。

「はい、あーん」

一口サイズにカットされたオレンジをフォークで刺して、赤屍が差し出してくる。
聖羅は大人しく口を開けて食べさせてもらった。
何だか雛鳥になった気分だ。

うまうま、と咀嚼して飲み込むと、今度は吹き冷ましてからグラタンを運ばれる。

「凄く美味しいです」

「そうですか」

赤屍は嬉しそうだ。
聖羅も嬉しい。
こんなに料理上手な恋人がいて幸せだ。
どれも美味しいが、特にパンケーキが絶品だった。
程よい甘さで、中はふわふわ、食べると口の中でバターと一緒に蕩けて、蜂蜜の味と香りが広がる。

「お口に砂糖がついていますよ」

「え、本当?どこですか?」

「ここに」

顎を掴まれて顔を仰向けられ、唇の端をぺろっと舐められる。

「あ、あかばねさ、」

名前を呼びかけて開いた口の中に舌が入ってきて、砂糖を撫でつけるように舌を舐められた。
そのまま絡みついてきた舌に翻弄される。

「んっ……んっ……」

舌と舌の間で砂糖が溶けて甘ったるい味が口の中いっぱいに広がっていく。
ようやく解放された時には、聖羅はすっかり溶けたバターのようにとろとろに蕩けきってしまっていた。

「ふ、ぁ……」

「すみません。貴女があまりに可愛らしかったので、つい」

「もう…」

「感じてしまいましたか?」

「赤屍さんのえっち」

「ええ。ですから、いやらしいことがしたいです」

「ちょっとだけ、なら…」

クス、と笑った赤屍がのしかかってくる。
トレイは危ないからと、ベッドサイドのテーブルに置かれた。
まだ全部食べてないのに、と目で訴えると、優しいキスで宥められる。
どちらのせいか、ひどく甘い味がした。

「では、私もデザートをいただきましょうか」

果たして“デザート”だけで済むだろうか。

二人分の体重を受け止めて、ベッドのスプリングが軽やかに跳ねた。


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