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『第五十六回体育祭を行います』


生徒会長の挨拶と共に始まった体育祭。
暑い太陽が私をジリジリと照らしつけていた。

自分のクラスの座席に座ると太陽を見上げる。
真面目に暑い、なんで体育祭なんてあるんだろう。
暑い、暑すぎる保健室でサボろう。暑さのせいで
真面目にやろうだなんて思考は一瞬にして崩れた。

そう思って保健室のほうに
足を向けると後ろから聞き覚えのある声が聞こえる。


「おー、なまえ」

「...ユンギ先輩。」


ひとつ上のユンギ先輩、とても無気力だけど
多分校内で一番の人気を誇る先輩。

私は何故かこの先輩に気に入られて
先輩は私を見つけると必ず声をかけてくれた。


「無気力ジジイがこんなところになんのようですか?」

「色々つっこみたいけどまあいいわ、お前今から保健室?」

「あ、そうです。向かってる途中だったんですけど
どっかのジジイに止められちゃって...」

「お前3回頭ぶつけて来い。」


頭をペシっと叩かれたものだから
嘘っぽく痛い振りをするとユンギ先輩がくすくすと笑う。
無気力で基本真顔な先輩だから本当に笑顔って貴重。


「ユンギ先輩は保健室でサボりですか?」

「人聞き悪いこというなよ、競技始まるまで休憩するだけ」

「サボリですね、言い方変えたって無駄です。」


チッと舌打ちしたユンギ先輩が面白くて
この人本当に無気力なんだろうか、なんて疑問にすら思う。
けど道行く女の子がユンギ先輩をみてさわぎだすと
いつもの真顔に戻る。なんだ通常運転。


女の子たちの波をくぐり抜けると
職員室で気分の悪い振りをして保健室の鍵をもらう。
ユンギ先輩は私にでかした!っていいながら肩をポンポンと叩いた。
やっぱりこの人最初からサボるつもりだったでしょ。


「お前ってさ、なんの競技でんの?」

「学年別リレーですけど気分悪いふりして別の子に変わってもらいました。」

「うっわ、ヤンキーだ。こいつヤンキー。」

「今サボってるあんたもだいぶヤンキーですけど。」


言い返すと口角をあげて笑うユンギ先輩。


「そういうユンギ先輩は何に出るんですか??」

「俺は借り物競争、もう始まるんだってよ。」

「あんた何してんですか早く行って面白いもの借りてきてくださいよ。」

「終わったらまたここ来るわ。」


そう告げてユンギ先輩は競技に行った。
ドアが完全にしまってまた元の静けさが訪れる。

校舎内だから聞き取りづらいけどユンギ先輩が
はやく招集場所に集まるように放送されているのがきこえる。


「...なにやってんだあのジジイ」


数分後にはスタートを合図するけたたましい音が聞こえた。
ユンギ先輩生理用品とか当たらないかな最高なんだけど。

なんてのんきに考えながらTwitterを開くと
廊下から誰かの走る音が聞こえる。
保健の先生かな、ベッドでちゃんと寝とこ。

ガラッとドアが会いたから布団の隙間から
ドアを見るとそこには先輩が立っていた。あれ本当に生理用品??


「ユンギ先輩どうしたんですか?」

「あのさ、」

「...?はい?」

「俺突然だけどお前が好き」

「....はい???」

「...借りなきゃいけないものが好きな人なわけ」

「それで、私を?」

「...もしお前がいいならついてきて、くんない?
こんな形で告白すんの癪だけど
俺、本当におまえのことが好きなんだよね」


真っ直ぐな瞳に見つめられて息ができなくなる。



ただし一生返しません

だってもうユンギ先輩のものだから


15'0604


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