夜の魔法

夜ってなんとなく虚しい気持ちになることが多くって
それでよく部屋から抜け出して
マンションの前の階段で座る癖があった。

夜遅い時間に出てることがバレるとお母さんによく怒られたけど
部屋の中にいるともっと悲しい気持ちになるから
今日もバレないように部屋のドアをそっとあけて外に出た。

昔からこのマンションに住むユンギのことが好きで、
でもきっと私は妹としか思われてないんだろうなって
そう考えるだけで涙がでてくる。

涙を止めようと思って上を向くと涙のせいで少しぼやけた視界には
綺麗な星が見えて、よりいっそう悲しい気持ちになった。


「あー、またここにいた。なまえ。」


聞き覚えのある、大好きなその声を聞くと
無条件に体が振り向く。


「...ユンギ、なんでここにいるの?」


大好きなユンギが、マンションの出口の前に立っていた。


「逆に聞きたいんだけどこんな時間になんでここにいるの?」

「質問を質問で返さないでよ...、なんかそんな気分だったの。」

「ふーん、じゃあ俺もそんな気分だったからここに来た。」


そういいながらユンギは私の隣に座って
それだけで私はもっと悲しくなる。


「で?まだなんか悩んでんの?」

「ユンギには関係ないもん。」


可愛くない言い方だな、って我ながら思う。
なんでこんなタイミングで来るんだろう。


「前からずっと言ってるその好きなやつに早く告白しなよ。」


昔ここで泣いてるのがユンギにバレた時
私はユンギに好きな人がいるって説明した。
もちろんそれはユンギのことだけど。


「簡単に言うけど難しいよ。」

「じゃあ俺で練習してみたら?」

「え?」


いや、練習してみたら?じゃないよ。
それ私からすりゃぶっつけ本番だよ。


「えー、ユンギよりもっとかっこいいし。」

「じゃあ俺が練習する。近いうちに告白するつもりだから。」


ユンギの口から発せられた聞き難い言葉が耳を通り抜けた。
それはつまりユンギには好きな子がいるってことで
要するに私は失恋したってことで、ああユンギの馬鹿。
本当になんで今来たんだ。


目から涙が落ちて頬を伝う感覚がわかる。
泣かないって決めたのに。


ユンギの顔が見れなくて、泣いてる顔を見られたくなくて
マンションのエレベーターに向かおうと立ち上がって
そのままマンションの自動ドアを抜けた。


「ちょ、なまえ!」


あと少しでエレベーター、あと少し。
後ろからユンギが追いかけてくるのがわかるけど
泣き顔を見られたくなくて振り向かなかった。


エレベーターのボタンを押してから中に入った時には
既にユンギに腕を掴まれた。


「...逃げんなよ。」

「逃げてなんかな「嘘つくなよ、逃げてるだろ。」


ユンギの真っ直ぐな瞳がなぜか悲しそうで
失恋した私より悲しそうな顔をする。


「俺が好きな人は、すぐ嘘つくの。それでもって寂しがり屋で」



「...でもこの上なく可愛いんだよ」



なにかの拍子で押してしまったボタンのせいで閉まった
エレベーターのドアと共にふっと唇を重ねられた午前0時。




シンデレラのように

0時の魔法にかかってしまった私


15'0531


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