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世を儚んだ俺は死ぬことにした。
奇特な俺の友人達、突然こんなことになってすまない。
でも俺にとってそれは唐突でもなんでもなかった。
小さい頃から俺は死ぬことを望んでいた。
理由は、幸せすぎたからだ。
幸せすぎて、何が幸せなのか分からなくなったからだ。
周りに溢れている幸せが当たり前すぎて、自分が本当に幸せなのかと不安になった。
虐待されていたわけじゃない。頭が悪いわけでもない。運動神経が悪いわけでもない。五体満足。衣食住もちゃんとしてる。友人もいる。
これは幸せなことなんだ。
普通とは、幸せのこと。
だけど、それらが『幸せなこと』なんだと気づいた時、俺は死ぬことを漠然と願うようになった。
その『幸せ』はいつか崩れ去るものだ。
俺はそれを強く確信した。
なんでそう思ったかは分からない。
分からないけど、気づいてしまった俺は正常に生きられなくなった。
『自分』というものを持つのが怖くなった。
大丈夫だ。
何も持たなければいい。
何も望まなければいい。
そうしたら怖くない。怖くない。
何かが無くなっても大丈夫だ。怖くない。
何も感じなければいい。怖くない。大丈夫だ。
漠然とした不安が怖かった。
俺は逃げた。
逃げた時、自分の中から溢れ出た赤色が広がる視界に、昔飼っていた猫が俺の手に擦り寄ってくる幻覚を見た。
そして俺は目を覚まし、見たことのない白い天井を見上げた。
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