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 ゾフェル氷刃海の手前の陸地。バウルの運ぶ船が地上に下ろされ、地上に降り立ったユーリ達はそこに立っていた。
 俺はてっきり船に残されるものだと思っていたが、レイヴンの「行くわよー、大将」という言葉に戸惑いながらも従った。
 確かゾフェル氷刃海には魔物がいたんじゃなかったか? 足手まといの俺がついて行ってもいいんだろうか。
 もし彼らの足を引っ張りでもしたら。そう考えると憂鬱な気分になる。置いていってくれればよかったのに。
 仲良く話す彼らの邪魔をしないよう、距離を取りながらその後ろをついていく。
 横には相変わらずレイヴンがいた。何を話すでもなく横を歩く彼に気まずく思う。
 彼もあの輪に入りたいのではないか? 彼らに混ざることのできない俺を気遣って、俺の横なんかにいるんじゃないか? 俺なんか放っておいて彼らのところに行けばいいのに。
 深く考えすぎて気分が悪い。俺は小さく息を吐いた。

 ゾフェル氷刃海の入り口付近。海に浮かぶ氷塊が連なったその場所を前に、海から吹き込んでくる寒さに顔を歪めた。レイヴンは寒さに弱いのか、しきりに手のひらをすり合わせて情けない声を上げている。
 ユーリ達はそれを見て呆れた顔をしていたが、構わずリタが説明を始めた。

「これからエアルクレーネに行って、エネルギー体で構成されたエアル変換機を作るわ」
「変換、機?」

 エステルが首を傾げると、リタが頷いてさらに続ける。

「エアルを効率よく物質化することで総量を減らすのが狙いなんだけど、そのためには変換機自体がエアルと物質の両方に近いエネルギーなのが理想なの」

 小難しい話に俺は頭を悩ませた。寝不足も相まってめまいがする。
 エアルが物質化する前に固定して、変換機を作るだとか、その核に聖核を使うだとか。聖核の話になった時、リタがこちらを見た。
 まるで俺が何かしないか警戒しているような目だ。実際そうなんだろうが。
 真っ直ぐこちらに向けられる目から逃れるように顔を背ける。俺なんか無視してそのまま話を続けたらいいのに、リタは怒りを抑えた口調で俺に話しかけてきた。

「前のあんたならこんなのすぐに思いついたんでしょうけどね」
「…………」
「エステルの力を悪用したあんたとあたしは違うから。……変な真似、しないでよ」
「…………あぁ」

 釘を刺された、のだろう。俺の言葉に苛立ちながら、リタは説明を再開した。
 心が冷えていく。さっきまで寒さを感じていたのに、体感が若干鈍くなったような気がした。まぁ、仕方がないことだろう。
 胸に嫌な血が流れる度に、これが自殺なんかした罰なんだと納得した。地獄よりも生ぬるい場所に落ちただけだ。……それだけのことだった。


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