嘘吐きスタート 1
目が覚める。一番最初に見えたのは木目の天井で、俺は何かに急かされるように上半身を起こした。
途端視界が歪み、頭の内側を走る痛みに呻く。頭を押さえて身体を曲げ、しばらくそのままの状態で痛みの波が引くのを待つ。
やっと痛みが引いてきた頃、俺は顔を上げて周りを見渡した。
「……ここ、どこだ……?」
そこは見たことのない場所だった。
トロフィーや賞状、金色の刀などが飾られたショーウィンドウ。近くに両開きの扉があり、その上に『体育館』と書かれたプレートがあった。天井から突き出した仰々しい監視カメラに、その近くにもう一つ扉。液晶テレビが壁にあり、俺はそれらにぼんやりと嫌な予感を覚えた。
「……なんだここ……」
目頭を押さえて俺は思い出す。
なんでこんなところに俺はいるのか。俺は確か、確か……?
「えぇと……」
考えて、俺はやっとのことで思い出す。
そうだ。俺は希望ヶ峰学園に入学しに来たんだった。
どういう人がいるんだろうと不安になりながら希望ヶ峰学園の門をくぐり、玄関ホールに入って、それから、……それから。
「くそっ……」
これ以上思い出せない。
ただ、その時激しい不快感に見舞われたのは覚えている。
また痛み出しそうになる頭を、右手の人差し指の間接で叩き、ふらりと立ち上がった。
もう一度ぐるりと見回して、俺は幽鬼のように近くの扉に手をかけた。
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