むかしのはなし 3

 あの子もよくやるな、と思った。
 俺の前には焦げた目玉焼きと焼いたベーコン、しなびたレタスと何故か短冊形に切り分けられた焼き色過剰のトーストが盛られた一枚の皿がある。俺は彼女にコーヒーを頼み、申し訳なさそうに顔を俯かせる彼女がぱたぱたと台所に消えていった。
 フォークで皿の上の物をつつき、どう攻略していこうものか思案する。彼女が戻ってきておずおずと差し出されたコップを受け取り礼を言う。口に含むとインスタントの粉末を淹れすぎたのか酷く苦い味がした。鼻を抜ける苦味に何回か唾液を飲み込む。
 俺の反応に彼女は慌て、グラニュー糖やらマリームやらを大量に入れられた。苦い顔で見守っていた俺の顔を見上げ、入れすぎたことに気付いて涙を目に溜めている彼女の頭を撫でる。それから毎朝家に訪れ、意地になったのか同じメニューが出されて俺は毎朝それを飲み込んだ。コーヒーだけは自分で淹れるようになり、幼い彼女の作品をコーヒーで流し込む。
 サニーサイドアップがね、と目玉焼きの別称を口にするあの子は俺と同じようなメニューを、同じコーヒーでいただいていた。
 俺が小学生で、彼女がその一つ下の時の思い出だった。


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