むかしのはなし 2

 愛用のボールペンが紙の上を滑る。先の小さい、細い字が書けるそのボールペンは恋人から貰ったものだ。特注品のボールペンは指に負担をかけない物で、文字を多く書く貴暮彰人にとってはありがたいものだった。市販のノートに文字を書いていく。説明書きだったり特徴の箇条書きだったり、時折図を描いて動き方を本当に理解しているかの確認をしたり、自分の思うことを書いたりと、ページが文字で埋め尽くされていく。
 今貴暮彰人が書いているのはあるドラマの登場人物のことだ。
 そのドラマや登場人物が好きなのではなく、テレビをつけてたまたま目に入ったものを自分なりに分析してまとめているだけだった。
 貴暮彰人には夢があった。希望ヶ峰学園に入学すること。それだけが彼の夢だった。

 貴暮彰人には親友がいた。彼は天性の天才で、周りの人間は親友が希望ヶ峰学園に入ることを信じて疑うものはおらず、貴暮彰人はそれが羨ましくて仕方がなかった。
 恋人も天才だった。貴暮彰人だけが凡人であった。
 だから貴暮彰人は努力した。希望ヶ峰学園に入学するために、全てを犠牲にしてもいいと思った。
 そうして貴暮彰人は全てを失った。


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