青春ラジカル 4

 調べることも無くなり、食堂に集まる時間になったので向かう。赤タイルの上に長テーブル一つ、その周りに丸テーブルがいくつか置かれた食堂には大体の人が揃っていた。食堂の内装は他のところよりも開放的だった。一つの壁一面に張られたガラス窓の向こうには木などの植物が植えられており、閉鎖的な空間ばかり見てきた身としてはちょっとした安心感が生まれる。植物達の後ろの壁を見て外に繋がっていないと分かってガッカリしたが、植物がある分精神的にまだマシだろう。
 ガラス窓から目を離すと苗木君と目が合った。彼と俺は同時に苦笑した。

「苗木君、大丈夫?」
「大丈夫だよ。貴暮君こそどう?」
「どこか捻ったりもしてないし、むしろ頭痛が治って良くなった方かな」
「そっか。……僕達、運が悪かったね」
「これから良い事あるよ、きっと」
「そうだといいんだけど……」
「よし、全員揃ったようだな! 皆、席につけ! 会議を始めようではないか!」

 石丸君の声に従って長テーブルに着席する。両脇には苗木君と江ノ島さん。前の席には朝比奈さんに促されて不二咲さんが座った。何故か不二咲さんは身体を縮こめて居心地悪そうにしていた。

「不二咲さん、どうかした?」
「えっ? う、ううん、なんでもない、よ……」

 気になって声をかけると不二咲さんは驚いたように顔をあげる。なんでもないと言った風ではないのに目を泳がせてまた肩を狭めた。疑問に思ったが、言いたくないのなら仕方ない。みんなが長テーブルを囲んで座り――十神君は周りの丸テーブルの一つに座っており、腐川さんにいたっては十神君の近くに立っていた――、それを見届けた石丸君が会議を進めるファシリテーターとして立ち上がった。

「お互い調査の結果を披露し合い、情報を共有化しようではないか! 一刻も早く、ここから脱出するためにッ!」
「あっ、ちょっと待って!」
「何事だ!」

 江ノ島さんの言葉に進行を止められた石丸君が声をあげる。江ノ島さんはぐるりと部屋を見回したあと、霧切さんがいないことを告げた。その言葉に各々が部屋を見回し始める。

「霧切ちゃん……どこ行っちゃったんだろ。誰か見た人いない?」

 朝比奈さんの問いにみんな首を横に振った。戸惑いと不安が部屋に満ちる。みんなの頭の中に嫌な予感が巡っていることが容易に分かった。モノクマの言葉がよぎり「もしかして……」と、呟く。だが石丸君だけは違っていたようで、霧切さんに対して怒りに震えていた。

「おのれ……霧切くんめ……初日から遅刻か……。遅刻しているにも関わらず遅刻の旨も伝えないとは、遅刻者としての根性がなっておらんぞ……」
「アンタ、言ってることメチャクチャだけど、分かってる?」
「だが何事も時間厳守だ。仕方あるまい。第一回希望ヶ峰学園定例報告会の開催を宣言するッ!!」
「ちょっと待って石丸君」
「何事だ!!」

 一度ならず二度も止められた石丸君は鋭い目で俺を睨みつけた。俺は苦笑して立ち上がる。モノクマの言葉が頭から離れず、不安だった。

「霧切さんが心配だから、探してくるよ」
「それでは報告ができないだろう!」
「大丈夫だよ、俺が調べたことは桑田君や江ノ島さん、不二咲さんが知ってるから」
「貴暮っち! 俺をナチュラルに抜かすなぁ〜!」
「あぁごめん葉隠君。というわけで、行って来る」
「だが君との情報共有ができないだろう!」
「それは霧切さんも同じだよ。あとで誰かに聞くこともできるし、大丈夫」

 俺はそう言って食堂を出た。


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