青春ラジカル 2

 学校の内装をしたエリアに移動して、一つ一つ部屋を調べる。できるだけお互い離れ過ぎないように行動する俺達は、言葉には出さないが皆不安に思っているんだろう。こんな意味の分からない状況下であのモノクマの言葉だ。無理もない。
 近くの教室に入って、壁に打ち付けられている鉄板を一つずつ確認していった。
 鉄板と壁の間は一分の隙間も無かった。鉄板に指をかけて引っ張ろうとするも、入り込む隙間が無ければ力も入らない。壁に横顔をつけてさらに確認する。目視するとその隙間の無さにため息しか出てこなかった。
 これだけ壁とぴったり張り付いているとなると、何か大掛かりな機械を使って打ち付けたとしか思えない。鉄板と壁を縫い付けるネジのような物も、人の手でやるにしては大きすぎた。

 教室内にいる皆に目を向ける。
 江ノ島さんはネイルが剥がれるから嫌と言い、確認するだけしているようだ。不二咲さんは協力的だが、あの小柄な身体だ。鉄板を触って不安そうにしている。
 葉隠君が壁に両足をつけ、身体全体を使って鉄板を無理矢理剥がそうとしていた。桑田君はそれを見て呆れている。俺はそんな二人に近寄った。

「んぐぎぎぎぎ! なんて頑固なやつだべ!」
「頑張りすぎだろ……」
「葉隠君、そんな無理に剥がそうとしない方がいいよ。壁と鉄板の隙間がないぐらい強く打ち付けられてるし、そんなことしてたら指を傷めるって」
「うーむ、この鉄板は外れかぁ? よっしゃんじゃ次はこの……」
「いやいやいや、そこはさっき俺が調べたとこだし……、ってかまたそのやり方かよ! アグレッシヴすぎんだろウニ頭!」
「んごごごごごご! 外れねぇー!」

 なんだか楽しそうだな。
 物凄く頑張ってる葉隠君を生暖かい目で見守っていると、後ろから江ノ島さんが来て、そちらを振り返る。江ノ島さんも桑田君と同じように呆れた顔をしていた。

「何してんのよ、アレ」
「剥がそうと頑張ってるみたいだね」
「馬鹿じゃないの?」
「……葉隠君って面白い人だよね」
「無理にフォローしなくてもいいって……」
「でも実際、葉隠君の行動で不安が少しだけ払拭されてるし……」
「そお? 馬鹿すぎて逆に不安になるっしょ」
「…………面白い人だと、思うよ……うん……」

 顔を真っ赤にして頑張ってる葉隠君には悪いけど、ちょっと、アレだと思う。
 まだ頑張ってる葉隠君にとうとう我慢できなくなったのか、桑田君が葉隠君の横っ腹をわりと強く殴って壁から彼を落とした。
 その光景が、払い落とされた虫のように思えて仕方が無かった。
 葉隠君が文句を言っているが桑田君がそれを無視して教室から出て行く。江ノ島さんが「じゃー次ねー」と言ってそれに続いた。
 不二咲さんがおろおろと葉隠君を気にしていたが、俺はそっと不二咲さんの背中を押して退室を促した。

「気にしなくてもいいよ、不二咲さん。行こう」
「う、うん……」
「待ってくれよぉぉ! 俺を置いて行くなってぇぇ!!」

 俺達は次の部屋へと足を進めた。


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