青春ラジカル 1

 ふと、目が覚めた。ぼんやりと目を瞬かせて、俺は天井を見上げながら疑問に小さく首を傾げた。俺、いつ寝たっけ?
 何故か痛む腹付近を労わりつつ身体を起こすと、そこはベッドの上だということが分かった。軽く見回してみるとどうやら部屋の中のようだ。
 頭を押さえて記憶を掘り起こしていく。学園長を自称するふざけたクマのヌイグルミのありがたい演説を聞き終え、それからの記憶が無いことに気が付く。
 これ以上考えても仕方が無いかと早々に見切りをつけてベッドから降りた。
 さて、ここはなんの部屋だろう。見たところ自室のような雰囲気があるが、俺の部屋という認識でいいのだろうか。

 学園長が言っていた、ここに集められた人間は一生ここで暮らさなければいけないという言葉を思い出してため息を吐いた。
 俺はとりあえず部屋の中を調べることにした。適当に引き出しを開けて中身を確認し、テーブルの上に置かれた自分の名前入りの鍵を見つけてやっぱりかとなる。
 壁に貼られた女子の部屋と男子の部屋の違いが書かれた紙をそのままにして、俺は部屋から出た。皆は一体どこにいるんだろう。ふらふらと赤い廊下を歩いていると、桑田君に出会った。

「おっ、よーやく起きたのかよ」
「桑田君か。おはよう」
「……なーんか暢気だよなオメーって。つーか今は夕方だっつーの。おはようじゃねぇよ」
「夕方? そうなのか?」
「そうそう。あー、窓が無いと分かんねぇよな……。今は多分五時ぐらいじゃね?」
「そんなに寝てたのか……。というか、そうだ。桑田君なら知ってるかな。俺なんで部屋で寝てたんだ?」
「はぁ!? 覚えてねぇのか!?」
「あ、あぁ。全然」

 桑田君は俺の言葉に呆れたようにため息を吐いた。そういう反応されると地味に傷つくからやめてほしい。彼はめんどくさそうに頭を掻いて説明してくれた。

「巻き込まれたんだよ。大和田のやつが苗木をぶっ飛ばしてよ、その先にオメーがいて苗木もオメーも気絶、ってな感じ」
「あー、そうだったのかー」
「暢気にノびてるオメーら以外は、各自ここの調査してるってわけ」
「何か分かったことあるのか?」
「なーんも」
「そうか……」

 俺は落胆に肩を落とした。そんな俺の反応に「いやそんな落ち込まれても」と桑田君が微妙な表情をした。廊下で立ち話をしていると、遠くから江ノ島さんの声が聞こえた。

「あっ! アンタ起きてたんだー! やっほー!」

 そちらに目を向けると江ノ島さんを先頭に不二咲さん、葉隠君が歩いてきているのが分かった。俺は三人に向けて手を振りつつ、桑田君とそちらに向かった。

「あ、あのぉ……貴暮君。頭痛、大丈夫?」
「そういえばいつの間にかしなくなってるな。睡眠を取ったおかげかも」
「アンタ盛大に吹っ飛んでたもんねー! マジウケル」
「はっはっはー! 貴暮っちも災難だったべ!」
「あはは……」

 急に賑やかになって、俺は誤魔化すように首あたりを軽く掻いた。集まった四人を見回していると江ノ島さんが「そうだ!」と言って俺に目線を合わせた。

「アンタらも一緒にここを調べない? あたしらとりあえず今から窓の鉄板を片っ端から調べるつもりなんだけど」
「あぁ、うん。良かったら加えてもらえると嬉しいな」
「マジかよ。めんどくせー……」
「鉄板が緩んでるとことかあったら外に出られるかもしれないし、桑田君も行こう」
「あー……。分かったよ」
「よっしゃー! そうと決まれば早速行くべ! さぁ行くべ!」
「なんでアンタそんなにテンション高いのよ……」

 無駄にテンションを上げる葉隠君に呆れ顔の江ノ島さん。俺は江ノ島さんのことを見て、思ったよりも面倒見が良いんだなと感心した。今にも走り出しそうな葉隠君の近くでおろおろしている不二咲さんに「よろしくね」と言うと、安心したような顔で「うん!」と返され和んだ。


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