きみのなまえ(1/5)



だいたいどうして意味もわからないのに戦わなくてはならなくて、なんの宛もないのにどうやってこの世界から抜け出したらいいのだ。








「はあ…」

なんだか目覚めたらこの世界にいた。
いろんな奴に話し掛けられて、初対面の男に「俺たちの仲間だ!」とか訳わからないこと言われて、仲間にさせられて。
キラキラした氷みたいな化け物に襲われて、取り敢えず銃を持っていたのでそれでなんとかして、そんな暮らしをして何日か経つ。

「帰りたいなー…」

帰る場所なんて覚えてないけど。
どこから来たのかさえわからないし。自分がなんなのかもよくわからない。取り敢えず名前は覚えていたみたいだけど、本当にそれが自分の名前なのかも怪しいところだよね。

「ん?」

不意に視界の端に何かを捉えた。
―――人だ。誰だろうか…。
目を凝らして見ると確か仲間だと言われた連中のうちの一人、なんと言ったか…名前が、

「す……」

あら。見事に覚えていない。

「くら?」

そんな名前だったような。
如何せん一度に一気に名乗られて紹介させられて、あの人数を覚えきれるはずがないのだ。相当特徴がない限り。
名前は忘れたが仲間の一人。
面白い武器を使っている男だ。剣と銃が融合したようなそれ。ガンブレードと言ったか。なんで武器の名前は覚えられているのだろうか。

「あ、一人じゃない」

一人だと思っていた男は一人ではなかった。氷みたいな化け物…イミテーション、そう呼ばれてるらしいが、それが…

「いち、に…さん、…よん?」

確認しただけで四匹。追われていたのか戦っているうちに遭遇したのか、何にしろ一対四じゃ圧倒的に彼のが不利だ。苦戦しながらなんとか相手の攻撃に当たらないよう避けている。上手くかわすにしても四匹相手では…
見ているうちにだんだんとこちらに向かってくる。圧されているようだ。彼は確か接近戦が得意だ。となるとやるのは…

「後方支援、かな…」

腰のホルスターから黒光りする鉄の塊を引き抜いて一匹のイミテーションに向けて発砲する。

パァン

「!」

見事頭部に命中し、ぐらつくイミテーション。一発では仕留められないようだ。弾に改良が必要か。

「セレネ…」
「また随分と人気者だね」

少しだけ息を乱した彼は心底うんざりしたように愚痴をこぼす。

「バッツが見事引き当てたんだ…」

バッツ…確か自分と年が近い旅人男のことではなかっただろうか。金髪の尻尾の生えた小さいのとセットでよく見かけるような気がする。確か出会い頭に「お葬式の帰り!?」とかなんとか失礼な事を言われたような気がする。本当に失礼だ、自分でもどうしてこんな黒装束なスーツを着ているのか覚えてないんだから。

「御愁傷様。後ろからサポートするから好きに暴れてみていいよ」

そう言って彼から一歩下がると、先ほど頭部に弾を当てたイミテーションに向けてもう一発食らわせる。綺麗な弾道を描いて胸部を撃ち抜くと、さらさらと崩れるようにそれは崩壊して消え去った。

「頼もしいな」

そう振り返って不敵そうに微笑まれる。
銃を持っていない方の手の親指を立てて答えた。するとそれを合図に残りの三匹の真ん中に斬りかかる男。隙の出来た彼の背に攻撃しようとしている左の一匹の足元を狙って転ばせると、右の一匹の頭部にまた弾を撃ち込む。

「っあぶな、」

弾道を読まれてどういう構造なのか弾を跳ね返されて其を寸でで避ける。避けた方向に転ばせた一匹がいたのでついでとばかりにもう一発。今度はしっかり頭部に。
男を見ると斬りかかった相手は既に倒したらしい、セレネが弾を宛損ねたイミテーションと戦っている。

「これでおしまい」

倒れたままの一匹にもう一発撃ち込んで、軽く蹴っ飛ばすと粉々に砕け散った。

「助かった、なかなかやるなあんた」

最後の一匹を片付けた彼はガンブレードの刃先を軽く振って一息ついて言った。

「後方支援はなんか前の世界でよくやってたような気がして」

自然とすぐに判断が出来るようだ。
替えの弾をマガジンに詰めてセーフティを掛け腰のホルスターに戻した。

「そうか…」
「はっきりじゃないけど、なんかそんな感覚覚えてるような気がしてね」

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