self-sacrifice(1/4)



※トリップタークスヒロイン








もう一ヶ月以上だった。
一ヶ月以上スコールに会っていない。
それどころか声すら聞いてない。

「なんでわたし、この世界に…」

続きは怖くて言えなかった。



self-sacrifice








アルティミシアを倒し時間圧縮の世界から無事戻ってこれた後、セレネの体は元いた世界へ返されようとしていた。
スコールの腕の中で淡く輝き消えそうになる体。ああ、もう時間なんだ…そう思って一度スコールを視界に捉えてゆっくり目を閉じた。きっとこれでお別れなんだ。

(でも…)

ほんの少しの期待を込めて願った思い。
彼にも通じてしまったのか、その体が彼の腕の中から消えることは無かった。その代わり

「行かないでくれ…セレネ」

強く強くスコールに抱き締められて、セレネを纏っていた淡い光の方が脆く消えていった。





*





それが二ヶ月前程の話。
一ヶ月半程前、スコールはリノアと共にエスタに発った。魔女の力を受け継いでしまったリノアを護るために、護衛としてエスタ行きを共にしたのだ。

少なからずスコールに好意を寄せているリノアとスコールを二人にしたくはなかったが、自分は余所者。先の戦いで多少の戦力になったもののやっぱり余所者であり図々しくも自分の意志でこちらに残ったのだ。自分の色恋沙汰で異議を唱える事は気が引けた。
幸いバラムではセレネもタークス時代の経験と知識から最年長SeeDとしてガーデンの再建や復興、そして任務にと忙しさに追われていた。

(もうタークスじゃないからね)

毎日着ていた黒いスーツは部屋のクローゼットに大事にしまってある。今では少し立派な装飾の施されたSeeDの制服も大分様になってきていた。

スコールと離れて初めの一、二週間はよかった。彼も彼なりに気を使ってくれたのか、一日の終わりにはしっかり電話をしてくれて声を聞かせてくれた。
話すことが得意ではない手前、受話器越しに無言になることは多かったがそれも心地良い時間だった。電話が出来なくとも素っ気ないながらも彼なりに考えた言葉でメールを送ってくれたり。しかしそれも最初のうち。

(急に忙しくなったとは聞いてたけど)

スコールには毎晩話していた。
「電話より睡眠時間を取ってくれ」と。他にも「忙しかったら無理をしないで」や「わたしのことは最後でいいから」など、とにかくまだ十代で忙しい彼に気を使って恋人らしからぬことは結構言っていた。

「セレネ、探したよ!
さっきキスティと学園長が…」

ぼうっとしていると知った声に呼ばれて声の主に焦点を合わせた。見慣れたハットを被ったアーヴァイン。彼とは先の戦いで同じ銃使いから親しかった。と言ってもセレネのはガンブレードだが。

「アーヴァイン…」

そういえばここは食堂だった。
やっと今日の仕事を終えて夕飯にビーフシチューを食べて食後の紅茶を飲んでいたのだが。

「紅茶、冷めてるよ?」

突っ込まれなくてもわかっていた。
はあ、とため息をついてアーヴァインが前の席に座る。ため息をつきたいのはこっちなのに。

「また何か悩んでる?」

また、とは実はリノアとスコールが一緒にエスタへ行くと決まった時にもアーヴァインに相談していたのだ。その時も黙りだったセレネを目敏くアーヴァインが見抜いて心配してくれたわけだったが。

「レディにそんな顔させるなんて、スコールは紳士失格だね〜」

わざと諧謔的に言ってくれたアーヴァインの言葉に少し気持ちが和んだ。スコールが紳士ね、

(あり得ないかも…)

くすり、と笑いを洩らすとアーヴァインは楽しそうにセレネを見て言った。

「セレネは誰かさんみたいに難しい顔してるより、笑ってた方が可愛いよ」

ウィンク付きで言われてぷっと吹き出してしまった。アーヴァインになら話しても良いかな。

「アーヴァインさ、
話聞いてもらって良いかな?」
「僕でよければ何なりと」

おどけた口調だったが見つめた瞳には少しばかり真面目な色が伺えた。

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