delirious with fever(1/4)



「スコール、」
「…セレネ…か?」







delirious with fever






ミッドガルにある神羅カンパニー本社ビルから突然このバラム公国に飛ばされてもうかなり経つ。俗に言うトリップってやつなのだろうか、知らない国や人、街、戸惑う事が多いながらもちゃっかりわたしはこのバラムガーデンという傭兵を育てる学校にお世話になっている。そしてちゃっかりガーデンの皆と世界を救う戦いの旅に出て(出ざるを得なかった)ちゃっかり魔女を倒してちゃっかりヒーロー扱いされていたりする(わたしは申し訳程度に戦っていただけなのだけれど)

「データ解析、終わった?」

そうそう、もう一つちゃっかりしてることがあった。結構大事なこと。

「あと少し…セレネは終わったのか?」

ちゃっかりガーデンに居候させてもらって、ちゃっかりヒーローになって、ちゃっかりこの目の前の彼、スコール・レオンハートの恋人だったりする。

「バッチリ。調子に乗って明日の分も片付けちゃったんだよね。」

魔女との戦いの後もガーデンの再建復興活動に協力しつつ普段SeeDが行う任務も一緒にこなすことを条件に(わたしが出した条件)ここに置いて貰っていた。学園長であるシドは無条件で置いてくれると言ってくれていたのだが、それではセレネの気が済まなかった。
けれど情報処理やデータ解析、ついでに隠密行動や調査活動といったその手の仕事は前の世界で散々行ってきた。だから朝飯前なのだ。

「そう………か、」

スコールは片手に資料室から持ってきたらしい資料を持ち少し陰った表情でぼそりと呟いた。少し歯切れの悪い返事。それにセレネは何か引っ掛かった。

「よかったら手伝おうか?わたしもうこの後の予定ないし。」

時刻はそろそろ日が傾きそうな時間。
このままだとスコールは夕飯を食べ損ねて面倒だからと食べずに今日を終えてしまいそうで、一応年上として恋人として、心配だった。

「ああ……いや、…」

どちらかわからない返事。
スコールにしては珍しい。普段ならきっぱり断ることがほとんどなのに。考えているのか視線をそらして何か呟いている。しかしあまりにその考える時間が長くて、セレネはついに痺れを切らしてスコールの腕を掴んだ。

「二人でやった方が早く終わるよ。」
「…セレネっ、」

そのまま彼の腕を半ば強引に引っ張ってスコールの自室に向かった。





*





問答無用でスコールの自室に行くとつけっぱなしのディスクトップの画面がスクリーンセーバになっていた。デフォルトのままのそれが彼らしい。ワイヤレスのマウスを握ると画面が元の画面に…

「あれ?」

セレネの目に飛び込んできたのは今まで彼が処理していたらしい作りかけのデータ。これはいただけない。いくらガーデンの自室だからと言って、大切な解析データを開きっぱなしで資料室まで行っていたのか、彼は…。

(でもスコールに限っていつもそんなことしないのに…)

隣を見るとスコールが持っていた資料を読んでいた。セレネは取り敢えず作りかけのデータをスクロールして見ようとしたのだが…

「え?スコール…もしかして…」

スクロールした先には真っ白な画面。
驚きのあまり思わずスコールと画面を交互に見比べて、最終的にもう一度「ええ?」と呟く。いや、だって、それくらいびっくりしたんだもの。

「もしかして一ページしか終わって…」

ばつが悪そうに無言で頷くスコール。心なしか頬が赤らんでいる気がする。

「他にやることがあったんだ…。今からやれば明日には終わるから、問題…っ」
「スコール!?」

ぐらりとスコールの体が傾いて、慌ててセレネはマウスから手を離すと彼を支えた。と言っても、体は当たり前にスコールの方が大きいためセレネが縋る様な体勢だが。

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