self-sacrifice(2/4)



「成る程、ね」

だから最近のセレネは元気がなかったんだね。と納得されてしまった。

「そんなにわたし、元気無かった?」

スコールとのすれ違い。
電話を入れても大抵は留守電で、折り返し掛かってくることも無い。メールもたまに素っ気なく一言二言。疑うわけではないがリノアもすぐ近くにいるのだ。もしかしたらリノアの方が大事になったのかも。そう思わない日はなかった。

「ゼルやセルフィも心配してたからね」

そんなに心配掛けてたのか。
余所者の癖に職までもらって住み処まで提供してもらって、心配まで掛けるなんて。やっぱりあの時元の世界に戻った方が良かったんじゃないのか。

「今から戻れないかな」
「どこにだい?」
「元の世界、……かな」

出来ればそのままスコールの記憶も忘れてしまえば良いのに。そんな都合の良いこと起こらないか。

「セレネ、僕は我が儘なのと甘えるのは違うことだと思うよ?」

そんな風に考えていると不意にアーヴァインが言った。

「我が儘は確かに良くないね。けど、甘えるって言うのは自分勝手な我が儘と違って、相手も嬉しい時があるんだよ」
「嬉しい…?」

寂しい、会いたい、声が聞きたい、抱き締めてほしい、名前を呼んでほしい、キスしてほしい、いろいろな感情が渦巻いていた。けれどスコールだって忙しいし大変なんだ。仮にも年上の自分がそんな我が儘言っていられない。そう思って我慢していた。

「確かにスコールは忙しいかもしれないよ。けれどそれをずっとセレネに我慢させてるのも褒められたことじゃないよ。セレネはスコールの恋人なんだからさ」

たまに電話に出ても今忙しいからとすぐに切られることが多かった。そんな時スピーカーから微かに聞こえたリノアの声に、激しく気持ちが沈んだりもした。

「スコールだって、セレネに甘えられたら嬉しいんじゃないかな?あんまりセレネって言わなそうだし、我が儘とか」

よく思うことがあった。
自分がはじめからこの世界の人間だったら、そうだったらもっと気を使ったりしなくて良かったのだろうか。自分が彼らと同い年だったら、年上だからと背筋を伸ばさなくて良かったのだろうか。

自分が魔女であるという不安と戦っているリノアに対し、違う世界からやってきて事情もよく知りもしないここで暮らして、年上なんだし文句や我が儘なんか言えない。自分が我慢さえすればすべて上手く行く。

「我慢するのは偉いと思うけど、我慢も行きすぎるとただの自己犠牲になっちゃうよ?」

自己犠牲――。

「我慢のし過ぎて壊れちゃう前に、スコールと話した方がいいと思うけどな」

そう言って思い切りウィンクされてセレネはたじろいだ。ゆっくり俯くとすっかり冷めたティーカップの水面に情けない自分の顔が映し出されていた。

「スコールは人の気持ちとか察するの苦手そうだし、本当のこと言ってあげなきゃわからないと思うよ?」

本当のこと。
寂しい、そう伝えたらいいのだろうか。
アーヴァインの言葉に励まされつつ、いつ、なんて話してみようか思考を巡らせる。スコールが帰って来る日はわからない…セレネ自身も仕事はあるためやたらと時間は取れない。

(もしかして時間、ない…?)

せっかく素直に寂しいことを伝えようかと思ったのに、セレネが今度こそため息をつこうとした時。

「はいこれ。学園長とキスティから預かった書類。」
「任務依頼?」

すっとアーヴァインに差し出された封筒を見て首を傾げた。普通任務の依頼なら直接学長室に呼ばれるのに。がさごそと中の薄い紙を一枚取り出して見ると、

「っ!」
「いってらっしゃいセレネ。ちゃんと話すんだよ?」

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