delirious with fever(4/4) 「美味しかった?」 「ああ…」 あれからセレネはほくほくと湯気が立ち上がる卵粥をスコールの元に運んできた。「食べさせてあげようか!」と爛々と目を輝かせるセレネに悪いと思いながら断って、食欲があまり無かったながらに全て完食したスコール。 「わたし普通のお粥だと味気無くてあんまり好きじゃないからさ、味噌入れてあるんだよね」 空になったそれを見て満足そうに微笑むセレネ。片付けようと立ち上がって、ふとまだやるべきことが残っていることに気付く。 「スコール、薬飲まなきゃ」 ベッドサイドに置いていた水の入ったコップと解熱剤をスコールに差し出す。差し出されたスコールはその両方を交互に見てから視線をセレネに戻した。 「ん?どしたの?」 きょとんと不思議そうにスコールを見つめるセレネ。スコールはちょいちょいと手でセレネを手招きする。 「まさか錠剤飲めないとか」 「違う」 意図が読めないまま彼を見つめていると徐にスコールが錠剤を自分の口に放り込んだ。そしてなんで自分を呼んだんだ?と不思議がるセレネの口元に… 「んう!?」 コップを押し付けた。 それだけでは済まずにそのままコップを傾けていく。傾けられたままに水はセレネの唇の方に流れていく。勿論セレネはそれを口に入れないと水が溢れてしまうわけだが… 「!」 口に入りきらない水が重力に従って顎から首筋に伝って流れていく。服の中に水が入って気持ち悪い、そう思ったと同時にコップを離されて一瞬ほっとして水を飲み込もうとした。 「っ…!」 今度はスコールに唇を塞がれた。 唇を舌で割られて、セレネの口内にあった水がスコールの口に移っていく。彼の口の端からも渡りきらなかった水が伝う。ごくり、とスコールの喉が動いてからゆっくり解放された。 「ばっ…ばか!」 「美味かった」 「薬が美味しいわけない!」 涼しい顔して漏れた水を手の甲で拭うスコール。熱はまだあって、体だって苦しいはずなのになんだこの涼しげな顔は。 「もう…」 「大丈夫だ、移ったら俺が看病してやるから」 「そうじゃなくて…」 ちらり、と横目でスコールを見て視線を落とすセレネ。 「口移しがいいなら言ってくれればちゃんとしたのに…」 一瞬、時が止まったようにスコールが停止する。たまにセレネはストレート過ぎて驚かされる。そして今のは本当にストレート過ぎて… 「っ、…寝る」 気恥ずかしくなり背を向けてスコールは布団を被った。そんな彼は耳まで赤かったが、それは果たして熱の所為なのか否か。 知っているのはスコールただ一人。 *fin* |