delirious with fever(2/4)



「ちょ、スコール、大丈夫?」
「悪い…大丈夫、…だ」

まだくらくらするのか眉間に手をやって寄りかかってくる様を見るととても大丈夫には見えない。さっきから歯切れも悪いしなんだか頭も上手く回ってないようだし…

(もしかして…)

眉間にある彼の手を退けて、じっと見つめると不思議そうに見つめ返される。どこか定まっていないと言うか、ぼうっとした青い瞳。なんとなく確信めいたものを感じながらセレネはスコールの額に手を当てる。少し驚かれたが、その数秒後にセレネ自身もまた驚かされた。

「っスコール、やっぱり熱い…」

そう、抱き止めた体といい彼の視線といい、いつもより異様に熱い。額に当てた手から伝わる温度も当たり前に熱い。これは完全に…

「風邪引いてるでしょ」

はあ、と溜め息をついてスコールを見直せば目尻がいつもより潤んでいる。ぎゅっと背に手を回して抱き締めるともたれ掛かるように抱き返された。

「………」
「だから頭働かなくて、全然進んでないんでしょ?」

抱き締めたまま問う。するとスコールがセレネの肩に額をくっ付けた。

「……悪い」

か細い声で呟くのが聞こえて、急に心配になって背中をゆっくり擦る。そのまま傍らにあるベッドまで彼を誘導すると素直に従ってついてきたので、軽く押してベッドに座らせる。

「あとやっとくから、スコールはちょっと寝てなさい。夕飯刻になったら起こすから」
「セレネ、」
「だーめ。こんな熱ある人に仕事任せてたら終わるもんも終わりません。」

ピシャリと少しきつめに言うと黙り込んでしまうスコール。わざとキツく言ったのだけれどさすがに可哀想になってぽん、とスコールの頭に手を置いた。

「それに、スコールが無理して風邪悪化させる方が心配。」

そう言って微笑んで見せると照れたのか視線を逸らされた。暫く考えるように床を見つめていたスコールだったが、諦めたのか大人しくセレネに従う事にしたのか上着を脱いでハンガーを手に取ろうとしている。それを制して上着を預かると、スコールは大人しくベッドに入った。

(なんか可愛いな…)

ちょっと不貞腐れたような表情に見えるからか妙に母性本能を擽られる。

「隣の部屋で作業するから、何かあったら呼んでね?」

スコールのパソコンの電源を落として、彼のやりかけのデータを保存したメモリを持って部屋を後にしようとした。一旦自分の部屋に帰ってノートパソコンを持ってこよう。寝てる側でカタカタやられても眠れないだろうし。そう思って一声かけたのだが、

「セレネ…」

呼び止められて彼を見ると上半身だけ体を起こしてこちらを見ていた。

「なあに?何か必要?」

ああ、氷枕とかあった方がいいよね?と問い掛けると無言で首を横に振られた。

「その…」

少し言いづらそうにさ迷うスコールの視線。不思議に思い首を傾げるセレネ。ちょっとの沈黙。

「そこで、」

そこ、と今まで彼が作業していたであろう机を指差すスコール。けれどその先の言葉はいつまで経っても出てこない。

「あははっ」

そんな彼の言いたいことを見事に察したセレネから思わず笑みが零れる。

「っ…」

只でさえ熱で赤らんでいた頬が更に赤くなるスコール。ごめんごめんと謝ってからセレネは今さっき消したばかりのディスクトップの電源を入れ直した。三十秒近く経っているから問題無いだろう。

「わかったよ。ここでやるから、安心して、ね?」

ベッドサイドまでいってスコールの頬に軽く唇を当てる。黙ってそのまま抱き付かれて、そっと手を握られる。ちょっとだけじっとしてると名残惜しそうに体だけ離された。

(風邪っぴきさんは甘えん坊だなあ)

口に出したらきっと拗ねてしまうから絶対に言わないけれど、握られたままの手がそれを物語ってる。

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