![]() ![]() 「っ……」 「セレネ!大丈夫か!」 不意を突かれて手元のハンドガンを弾き飛ばされてしまい、覚悟して瞼をぎゅっと閉ざした時だった。 「セレネに手は出させないっ……!」 重量のあるバスターソードを片手で軽々と持ち上げ目の前のイミテーションを躊躇いもなく彼は薙ぎ払った。 REMember you. 「ありがとう、クラウド」 彼の放った一撃でイミテーションは粉々に砕け散った。目前に今度は彼の手が差し出され、セレネはその手をぎゅっと握る。 「わっ、」 勢いよく、けれど優しさのある力で引っ張られて地面から立ち上がる。スラックスに付いた砂を払おうとしたらそれよりも早く温かい温もりに閉じ込められた。 「クラウド、暫く見ない間にすっかり強くなっちゃったね」 神羅の一般兵として働いていた頃が懐かしい。あの時は彼よりタークスであるセレネの方が遥かに強かったはずだ。 「わたしなんか敵わないぐらい逞しくなったし」 「別に……」 言葉を濁すクラウド。ああ、照れてるんだなとセレネは笑った。 「スコールみたいなこと言わないの」 クスクスと今度は声に出して笑うとぐっと肩を掴まれて視線を合わせられた。目の前には真剣な顔をしたクラウド。 「クラウド?」 「アイツにはあまり近付くな」 真っ直ぐな青い瞳に吸い込まれそうで、思わず見惚れてしまいそうになる。気が付いたら無意識に頷いていて、スコールごめんと心の中で謝罪を一言。 「それとセレネ、あまり一人で行動しないでくれ」 「え、なんで?」 スコールに近付くなと言ったら今度は一人で行動するなと。保護者の様なクラウドにセレネは目をきょとんと丸めた。 さわさわと静かな風が吹いて、地面から生える若草色の植物達を揺らした。 「心配なんだ」 肩を掴んだままクラウドが俯く。 風に掬われて綺麗な金髪も靡いていた。 「心配?」 「セレネがその……怪我、しないか」 この青年は確か昔から優しかった。 自分よりかは逞しくなったし強くなったし敵を倒す時も躊躇わず剣を振るえるようになったけれど、根本的な部分、優しさは変わって無いんだなとなんだか嬉しくなった。 あまり記憶が鮮明では無いのだけれど、彼とはきっと仲が良かった。 「優しいんだね、クラウド」 「セレネにだけ、な」 ふわりと靡く髪を撫でられた。 次の瞬間にはその手がするりと頬を撫でて唇に行き着く。下唇を親指でなぞられて、セレネは静かに瞳を閉ざした。 |