ラナンキュラスに恋をした(1/3)



もっと社長秘書とかお茶汲み嬢とか受付嬢とか華やかな子を使って欲しい。真っ黒な制服でお葬式みたいだって嫌味言われたこんな血生臭いタークスのわたしなんかじゃなくって、華やかな。









大体何しにここに来たのかって、わたしはセクハラされに来たのではない。いつもいつもいつも思うけれど豊満なバストだって触りたくなるようなお尻だって眩しい美脚だって備えてる訳じゃないし。どちらかと言うと日頃の任務のおかげで普通よりは少し筋肉質な体つきになってしまっているのだし。

「社長っ早く書類を」
「今仕上げただろう?少し休ませろ」

自身の大腿にある重みに慌てて怒鳴ったのだが呆気なく拒否された。今仕上がったのはまた別の書類だ。次頼みたいのだって今日中に見てサインしてもらわないと困る。けれどそのサインが出来る唯一の人物である彼は午前中長引いた会議に疲れたのかやや駄々を捏ねていて叶わない。

「それは違う書類で、次のも今日中に」
「今日中なら大丈夫だ」

ああ言えばこう言う。正にそんな感じの我が社の有能な彼、泣く子も黙るルーファウス神羅。名前の通りここの社長だ。
そんな社長が何故わたしの大腿に頭を乗っけて寝ているのだろう。わたしが聞きたいぐらいだ。と言うか教えてほしい。

「社長、あの、本当に……」

なんでわたし呼んだんですか?
今日いつものようにタークスオフィスに出勤していつものように提出書類に手をつけようとした時だった。ツォンさんに『午後は社長室に行ってくれ』と言われたのは。まるで死刑宣告のように思えたそれは今回だけではない。

「社長命令だセレネ、暫く動くな」

何が社長命令だ立派な職権乱用ではないか。動くなってことはこのままセクハラ紛いに大腿を貸したままでいろと言うことだ。実に不満だ。

「社長、セクハラならわたしじゃなく秘書の方や受付嬢にしてください」

思い切って言ってみる。
秘書や受付嬢が聞いていたら血相変えて金切り声で怒られそうだ。それくらいヒンシュク買う言葉だったに違いない。けれどこの男は一つも顔色なぞ変えずに言ってのける。

「人聞きが悪いなセレネ。タークスと社長のコミュニケーションだ」
「そんなコミュニケーション要りません!第一、どんなコミュニケーションですか!」

クスクスと笑ながら社長が起き上がる。
あ、これは完全にからかわれたんだな。つい反応して返してしまった自分を呪いたい。座っていた革張りの高級なソファーから立ち上がって社長の傍を離れようとする。危険な感じがする。タークスで養った勘だ。

「何故逃げる?セレネ」
「いえ、逃げてるわけでは」

目が座っている。
しかしいちいちわたしの名前を呼び捨てに呼ぶのはやめてほしい。その無駄に色気のある声で呼ばれる度にわたしのちっぽけな構造の心臓がいちいちドキリと高鳴るのだ。本当に訳がわからない、我が心臓よ。

「秘書に受付嬢か、反吐が出るな」

今この人とんでもないこと言いました。
全国の秘書さんや受付嬢さんを敵に回しましたよ社長。怖くて声に出して言えないけれど。じわりじわりと社長がこちらに歩いてくる。咄嗟に後ずさるわたし。

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