![]() ![]() 社長の護衛。 それが暫くのわたしの仕事。 出張でコスタ・デル・ソルまで来ていた社長、そして数人の神羅兵にツォンさんにわたしだ。長く滞在するかと思われた社長の仕事は当初よりスムーズに進み、今日朝早くミッドガルにある本社に戻るべく港を出港した。 「あれは……」 港に着いてすぐにジュノンからミッドガルまで、社長を乗せた車は無事に走っていたのだが。 「主任、わたし行きます」 突如出てきたモンスターに道を塞がれてしまった。 medicine for headache! 「セレネ、しかし」 「大丈夫です大丈夫です。主任は車内で社長と見学しててください」 心配するツォンさんを余所に、わたしはそそくさと愛用のガンブレードを手に後部座席から降りる。隣に座っていた社長が「頼もしい限りだ」と労いの言葉を呟いていた。 「まあこれぐらいなら」 車の前に立ちはだかる3匹のモンスターに向かい合うと、ガンブレードを握り直して地面を蹴った。 * 「ご苦労だったな」 車に戻ると出た時と変わらぬ体勢で座っていた社長が微笑を浮かべて出迎えてくれた。 「当然です」 なんとか微笑みを張り付けて返したが、 (マズイ、動かない方が良かったかもしれない……) あんまり綺麗に笑えていなかったかもしれない。ドアを閉めるとすぐに車は走り出した。 さっきツォンさんがわたしを行かせるのを躊躇ったのには理由があった。まだコスタにいた昨夜、何がどうしたのか頭痛が酷かったのだ。現地の病院で一応診ては貰ったが風邪か何かじゃないかと。うやむやな診断結果で結局頭痛にうなされたまま一晩過ごしたのだ。 (朝は比較的平気だったのに……) しかしわたしはタークスなのだ。 頭痛程度で社長の護衛すら出来ないなんて神羅の恥だ。体を動かせば痛みも忘れるかと自らモンスター退治を買って出たのに。 (仇になったかな) 道がしっかりしていないのか、はたまた運転手の運転が荒いのか、ぐらぐらと揺れる車内に合わせてわたしの頭痛もだんだんと昨夜の痛みを取り戻してくる。気晴らしに見ていた外の景色すら今は見れたもんじゃない。本当に風邪だったのだろうか。頭痛と共に寒気がしてくる。ズキンズキンと痛む頭。 本社前についた頃にはもう意識は朦朧としていて。 「セレネ、着いたぞ」 ツォンさんに言われて慌てて社長より先に車の外に降りたのだけれど。 「っ……う」 「セレネ?」 周りを確認してすぐ、次いで車から出てきたあろうことか社長の胸に倒れ混んでしまった。 「セレネ、おい、セレネ?」 呼び掛けるルーファウスの声すらゆらゆらと揺れる意識の中に飲み込まれて、セレネははたりと気を失った。 |