medicine for headache!(3/3)



「しゃ、社長……」
「名前で呼んだらどうだ」

ピシャリと返されて黙り混む。
痛む頭を労るようにそっと撫でられて髪を梳かれて心地いい気分になりながらも流されまいとなんとか仕事調で話す。

「職務中で……」
「君は今日はもう任務終了だ」

ふっとルーファウスが笑ったのが空気を伝わってわかった。そう言われてしまったら他に返す言葉がない。

「……」
「セレネ」

優しく諭すように名前を呼ばれて、我慢出来なくなって自分からもルーファウスの背に腕を回した。また彼の笑う声が聞こえて酷く甘えたくなった。

「頭痛い」
「無理するからだ」

怒るような口調だったが背中を擦る手は優しいまま。それに甘えて胸に擦り寄るともっと力強く抱き締められた。

「だってタークスだもん」
「君はタークスの前に、俺の大事な1人の女性だ」

駄々っ子のように言ってみると言い聞かせるように返される。本当にこれでは子供と大人だ。歳はそう変わらないはずなのに。

「ルーファウス」
「どうした?」
「ちょっとだけ甘えさせてね」

そんなに長い時間自分に構ってる余裕は多分無いだろう。まあ彼なら望めば仕事全部後回しにして傍にいてくれるだろうけど

(そこは聞き分けよくないとね)

ぎゅっとしがみついて暫く無言のまま時間が過ぎる。どれくらいだろうか、そう長くない時間そのままでいて、名残惜しげにルーファウスから離れた。

「ありがと」

にこっと笑うと同じように微笑んでくれる。仕事の時とは違う微笑みで。

「夜まではそこで寝ているといい。仕事が片付いたら送っていこう」

頬をすっと撫でられてゆっくり体をまた横たえた。首元まで毛布を掛け直してくれて、一度立ち上がったルーファウスは思い出したようにもう一度傍らにしゃがみこんだ。

「?」

不思議に思って見ていると、小さな白い紙袋から何かを取り出してわたしに見せた。

「医者から薬を預かっていたんだ」

そう言って唇をとんとんと撫でられる。言う通りに口を開くと錠剤が二つ放り込まれてわたしは起き上がる。

「んん!?」

ほぼ同時に唇を塞がれて、驚いていると口内に水が流れてくる。それごと薬を飲み込んでほっと安心していると今度は顎を掴まれて深く口付けられてしまう。

「……ん」

舌を絡め取られて撫でられて、息が持たなくなりそうなところでゆっくり解放された。もう一度唇に触れられて出来た糸を切ると彼は立ち上がってまた毛布を掛け直す。

「おやすみ」

熱なのかはたまた彼の所為なのか、暫く頭がぽやぽやして寝付けなかったのは言うまでもない。


*fin*



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