medicine for headache!(2/3)



「っセレネ!社長、申し訳ありません、すぐにセレネを……」

ルーファウスの腕の中で意識を失ったセレネを見て、慌ててツォンが言った。見ればぐったりと力が抜けて完全にルーファウスに抱き締められている状態だ。

「社長、セレネを」
「熱があるみたいだな」

あろうことか社長にいつまでも社員を抱かせてるわけにはいかない。ルーファウスからセレネを預かろうと動いたツォンだったが、肝心の本人はさして気にせずセレネの額にその綺麗な手を当てて熱など測っていた。

「結構あるな」
「社長っ」

心配そうに呟くと支えていた体勢からセレネを横抱きに抱え直すルーファウス。ぎょっとしたツォンが再び呼び掛けるが。

「常勤医に社長室まで来るように伝えてくれ。セレネはそこで寝かせておく」
「は、はあ……」

そう言うとセレネを抱いたまま本社の中に入って行ってしまった。呆気に取られたツォンはただ頷いて見ていることしかできなかった。





*





「ん……」

うとうとと定まらない焦点がゆっくり合わさっていく。セレネは見慣れない高い天井にすぐに体を起こしたのだが

「っ……いた」

持ち上げた頭がズキン、と酷い痛みに襲われて思わず頭を抱えてしまった。少し落ち着いてからゆっくり辺りを見回すと

「社長、室……?」

ぎょっとして眠気が一気に吹っ飛ぶ。
寝かされていたのは黒い革張りのふかふかのソファー。親切に少し分厚めの毛布が掛けられていた。そういえばさっき、車から降りて意識がぐらついて、確か。

「目が覚めたか」
「社長っ!」

そうだ。
社長の方に倒れこんだんだ。
思わず大きな声を出して頭に走る激痛。
再び頭を片手で抱えると社長が心配そうにソファーの横に歩み寄ってきた。

「コスタの方で流行っている頭痛を伴う風邪らしい。薬を飲んで2、3日安静にしていればすぐ治ると医者が言っていたよ」

そっと湯気の立つカップを渡されて躊躇いがちに受け取る。社長がいれたのだろうか?
熱いのは苦手なので冷まそうと軽く息を吹き掛けるとその衝動が頭に伝わりズキリと痛んで顔を歪める。

「すまない、気が利かなかったな」

それを見ていた社長、ルーファウスはセレネからカップを取り上げて代わりに冷ましてくれる。ある程度湯気が収まりそうになるとまたセレネにそれを渡した。

「あの、社長、すみません」

カップに口を付けて一口、仄かに甘いココアの味が広がった。両手でカップを持って躊躇いがちにルーファウスを見つめながらセレネは続けた。

「体調管理もろくに出来ないなんて、護衛失格ですね」

はあ、と溜め息を吐いたと同時にまた痛みに襲われる。近くで見ていたルーファウスは心配してセレネの頭を撫でた。

「朝から君の様子がおかしいのはなんとなく察していた。ただ、倒れる程とは思っていなかったな」

なんとなく気まずくて顔を俯けた。
旗から見たらまるで大人に怒られる子供のように見えるかもしれない。

「ええと、もう大分良くなったので、仕事に戻ります。社長、本当に」

持っていたカップをローテーブルに置いて絨毯の上の革靴を履こうと体を捻る。

「まだ熱があるだろう?」
「っ!」

そうしたところで急に前髪に手を掛けて退かされルーファウスの額がそこに触れた。至近距離で彼の整いすぎた顔を見ることになって慌てるセレネ。

「それに2、3日は安静にとさっき言っただろう。聞いてなかったのか?」
「い、いえ……」

逆らえなくて靴を履こうとしていた足を止める。すると満足そうに笑んだルーファウスはセレネを抱き締めて背中を擦った。

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