![]() ![]() 「元の世界のことかあ」 ふらふらと折り曲げた足を揺らす。 子供っぽい仕草に隣にいたライトニングが笑った。 「私も少ししか思い出せてないんだが、セレネは私より先にこの世界に居ただろ?」 確かにライトニングより先にこの世界に呼び出されたけれど本当に僅差だ。第一思い出した記憶が本当に正しいのかどうかなんてわからないし判断出来る人間もいない。 「でも珍しいねライトが他人に興味持つなんてさ」 「セレネ以外興味ないね、とでも返せばいいか?」 少しだけ声音を真似て言ったライトニングにセレネは吹き出すように笑う。真似た本人のライトニングも可笑しそうにクスクスと笑っていた。 「何がそんなに可笑しいんだ」 「「クラウド!?」」 恨めしそうに聞こえた低い声にセレネもライトニングも慌てて振り向く。見るとやや不機嫌そうに腕を組んだクラウドと、その後ろに若干笑いを堪えているスコールが目に入った。 「随分仲が良いんだな」 「お陰さまでな、仲良くさせてもらってるぞ。セレネとは」 慌てた仕草など一瞬で吹き飛ばしたライトニングが挑発するようにクラウドを見上げた。セレネは未だに慌てたままだ。 「アンタが他人に心を許してるなんて、珍しいな」 感心したように後ろにいたスコールが呟いた。クラウドも同じことを言いたそうな顔だ。するとライトニングはスコールを見てからもう一度口を開く。 「ロンリーライオンとロンリーウルフとは違うからな?」 「ぷっ」 鼻で笑ったライトニング。 セレネは盛大にまた吹き出して肩を震わせて笑いを堪えている。思わぬところでとばっちりを食らったスコールの眉間にシワが寄る。クラウドはひくひくと頬が引き吊っていて、陽射しが暖かく麗らかな陽気の次元城には妙な空気が流れていた。 * 「ねークラウドってば」 あれから日が落ちて夕方。 剣の腕を磨くためにと草原でバスターソードを振るうクラウド。セレネはそんな彼に先程から呼び掛けているのだが、あまり相手にしてもらえない。 「ごめんって」 「だから別に怒っているわけでは……」 嘘。顔を見て否定してくれない。 完全に怒ってるわけじゃないか。 背にした大木を座りながら見上げる。さわさわと時たま吹く風に葉が揺すられて心地いいメロディを奏でている。それに一定間隔でクラウドが素振りをする音が交じって、なんだか酷く落ち着く。 「ライトニングだって冗談で言ったんだよきっとさー」 その冗談がなかなか通じない相手だと言うのは百も承知だけれど。クラウドも本当は怒っているというより拗ねてるという表現の方が多分正しい。スコールは完全にとばっちりだったが。 「わたしはクラウドのことロンリーウルフだなんて思ってないよ?」 一瞬クラウドの腕が止まる。 けれど直ぐに何事も無かったように素振りは再開された。セレネはきょとんと首を傾げる。 (そうじゃないんだけどな……) 短く溜め息を吐き出すクラウド。けれど途中で背中に感じた温もりによってその行動は静止される。 「セレネ?」 ぎゅっと、効果音が鳴るような動作でセレネがクラウドに抱き付いた。ぴったりと背中にセレネの温もりを感じる。 「ね、クラウド怒ってる?」 そのまま止まっていると少し不安そうなセレネのくぐもった声が聞こえてきてクラウドは見られないように微笑んだ。 「だから言ってるだろ?怒ってはいない、って」 肩越しに声を掛けると抱き付く力が強まった。そんなセレネの行動にまた笑みを深めるクラウド。自分が怒ってると勘違いして恐る恐る聞いてくるセレネ。可愛いじゃないか。愛しくなる気持ちを抑えて平静を装いクラウドは言った。 |