Pass auf Dich auf.(1/4)

風邪を引いて倒れて2日目。
結局クラサメのようにすぐに良くなったりする訳ではなく、本日も絶賛体調最悪なわけなのですが。

「クラサメさん?」

朝、起きるとクラサメがベッドに伏して眠っていた。下半身は椅子に座ったままで上半身のみフィアが寝ているベッドに凭れている。自分の腕を枕代わりにしてすやすやと寝息を立てている。

「ん?」

無言の声に気付きフィアは自分のベッド上の足元を見た。するとクラサメのお供のトンベリがちょこんと座ったまま此方も眠っている。しかもフィアの足を枕にして僅かにクラサメと同じ様な体勢で。

「似るんだね」

思わずくすっと笑いが洩れる。
しかしそれが良くなかった。その振動が一気に神経を駆け巡り、ズキンッとした刺激を脳に送らせてしまった。

「っい、たぁ」

ぐっとこめかみ部分を抑えてマッサージするよう解してみる。けれど痛みはなかなか治まらない。

「……フィア?」

なんとかならないかと頭を抱えていると気配に反応したのかクラサメがゆっくり起き上がった。

「……痛むのか?」

起きて一番にフィアの心配をする辺りが彼らしいと言うかなんと言うか。クラサメはそっとフィアの肩を撫でた。

「あ、いやだいじょう」

大丈夫、と言う前にじろりとクラサメに睨まれる。嘘はつくなと言うことなんだろう。フィアは視線を逸らしてばつが悪そうに答えた。

「かなり、痛いです」

トンベリがこしこしと目を擦っていた。
ああ、彼も起きたのか。




Pass auf Dich auf.


「で、でもほら!熱37度ですし、全然平気ですよ!元気、元気!」

「37.00」と表示されている体温計をクラサメの目前でぶんぶん振りかざしてみる。怪訝そうな表情の彼はゆっくりと溜め息をついて、体温計を振り回しているフィアの腕を掴んだ。

「クラサメさん?」
「静かにしろ」

何をするのかと思えば手首の辺りにクラサメの長い指が2本添えられる。ベッドサイドにあったアナログ時計をチラチラ見ながらクラサメは暫く無言だった。

「62回」

少ししてポツリと呟くクラサメ。
もう話しても大丈夫かと思いフィアは「何がですか?」と彼に問い掛けてみる。顔を上げたクラサメと視線がかち合う。

「一般的に、健康な人間の脈は1分間に60〜80回が正常だ」

ああ、脈を取っていたのか。
フィアは納得してこくりと頷く。

「なんだ!じゃあわたし正常じゃ」
「フィアは30秒間で62回。倍にしたらどうなる」

30秒間で62回、となると倍にしたらもれなく124回。とても正常とは言えない。

「薬を飲んで熱だけ下げても、それは表面だけで体はまだ健康ではないんだ」
「つまり?」

クラサメの言葉の先を促すように聞くと頭にそっと手を置かれた。

「今日も絶対安静、だ」

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