affection.(1/3)

*


「はぁ、はぁ……」

魔導アーマーの研究データは予定通り壊すことに成功した。システム情報の入ったメモリーも入手し、研究員も全員始末した。

「想定の範囲内とは、言えないかな」

それまでは報告通りだった。
研究員の大体の数や研究室の場所、侵入経路。しかし最後の最後で明らかに報告とは違う事態に陥った。

「1人だとちょっと、キツい……ね」

ひゅんっと可変式の剣を振り抜いて斬りかかってきた皇国兵を吹き飛ばす。上の足場から銃の弾を乱射してくる皇国兵達にファイガを放って纏めて爆発させ、間髪入れず突進してくる十数人の兵の攻撃を避ける。剣を畳んで散弾銃に切り替えて、ショットシェルを叩き込めば。

「やった、……かな?」

掃討出来たかに思えたが、それは一瞬の糠喜びで。すぐに追加で皇国兵は湧いてくる。ご丁寧に先程の倍以上の数で。
突破しようにも道は塞がれている。更に守りを固められているようで彼らを1人で全滅させなければそれは叶わないようだ。

「次から次へと」

エッジを振り出し再び皇国兵達に立ち向かう。もう100人近く相手にしたのではないだろうか。恐らくその倍以上まだ兵はいる。何が小規模な研究工場だ。

「っ……!」

さすがのフィアも一瞬の隙も見せられない状態で延々と戦い続けている。上の皇国兵から放たれた弾を避けきれず、右腕を掠めた。

「一斉に掛かれ!!」
「殺せ!!」

それが引き金となり、活気付いた皇国兵達は一斉にフィア目掛け突撃してくる。

「っ……」

向けられた刃を受け流し、顔を掠めそうになる切っ先を避け兵の腹に蹴りを入れる。放たれた弾丸を魔法で爆発させ再び剣を避け…

「この野郎!!」
「っうあ」

地面に付いた手を踏みつけられてそのまま皇国兵の蹴りがフィアの腹に思い切り入った。軽いフィアの体は簡単に吹き飛ばされ硬い壁に叩き付けられてそのままずるずると倒れる。

「へへ、漸くやったぜ!」

剣を構えた皇国兵がゆっくりとにじり寄ってくる。げほげほと咳き込んだフィアの口から赤いそれが吐き出された。

「生け捕りにして捕虜にするか」

このままでは捕まってしまう。
そんな失態許されない。いくら報告と敵兵の数が違うとは言え1人で乗りきらねばならない。戦場とはそう言うものだ。
すぐに応戦しようと武器を構えようとした。けれど吹き飛ばされた時に手放してしまったのか、エッジが剥き出しのままそれは遠くに転がっていた。

「よく見たら可愛い顔してやがるしな」

ならば魔法でと掌に力を込めた瞬間、

「ぐあっ……!」

その手を持ち上げられてナイフを突き立てられた。裂くような痛みが走りその激痛に目が潤む。

「ははは、こいつ殺してもいんじゃないか?本部に連絡行ってないんだろ?」

皇国兵の言葉なんか頭に入らなかった。
赤い赤い深紅のそれが腕を伝って頬に流れてくる。手の感覚が無かった。

「ちょうど朱雀には腹が立ってたんだ、いたぶって殺してやろうぜ!」

頭上で交わされる不吉な会話も耳に入らず、目の前の兵を蹴り倒す気力も無かった。先程入った兵士の蹴りが思ったより強烈で、動くのさえ億劫だった。

「よし、適当に殺したって連絡して向こうの空き部屋に連れていこうぜ。そこなら誰にも気付かれないです」

「誰にも気付かれない場所で、彼女に何をするつもりだ?」

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