Pass auf Dich auf.(3/4)

(また熱、上がったのか?)

朝より火照って薄桃色に染まっているフィアの頬。熱に浮かされた熱い瞳。少し苦しそうに続く呼吸。
生憎クラサメも病み上がりだったが、既にいつも通りの生活が出来るほど回復している。今の彼女を長い時間目に入れているのはいろいろな意味で健康な彼には毒だった。

「つめたい〜」
「っ」

考え込むクラサメの手に、突然熱い何かが押し当てられて彼は驚いた。見ればフィアが彼の手を自分の頬に当てている。
そういえば自分も床に伏している時、フィアの手の冷たさが心地好く感じた。熱を持った体なら尚更に。
徐に、フィアの頬に当てられている手に魔力を込めて神経を集中させた。

「こんな事に使うのはどうかと思うが」
「?」

淡い光がクラサメの手の中に広がる。
同時にひんやりとした冷気が彼の手のひらに広がりフィアの頬を適度に冷やしてくれる。

「あ、きもちいい」

思わずその心地好さからフィアは瞼を下ろした。さすが冷気魔法が得意なだけあるな、なんて思いながらクラサメの手を額に持ってくる。

「ん……も、へーきです」
「いいのか?」

少しして彼の手を解放する。
気持ちいいけれど、あまり長い間魔力を放出していては彼にも負担が掛かってしまう。例えちょっとしか使っていないにしたって本来は敵を凍らせるための攻撃魔法。それを凍らせないように力加減を調節するのは神経を使うだろう。一応彼だって病み上がり。無理をさせてしまうのは良くない。

「ありがとうございます」

笑ってみせるとクラサメの表情も少し穏やかになった気がした。

「クラサメさん、午後のお仕事は?」

ふと、アナログ時計の時間を気にしてフィアが言う。昼休みももう終わってしまうのでは?

「私も一応病み上がりだからな、今日の午後は休んでろと言われたさ」
「あ、そうなんですか?」

成る程。ならいいのだが。

「ん?じゃあクラサメさんも、休んでた方が良いんじゃないですか?横になって安静にしてた方が」
「そうだな……」

何か考えるように顎に手をやって、フィアをチラリと見るクラサメ。

「そうさせてもらおうか」

となると、クラサメはもう自室に戻ってしまうのだろう。少し寂しいけれど、彼だって一応病み上がりなのだから仕方がない。
フィアは上半身だけでも起き上がらせてクラサメを見送ろうとした。

「んん?クラ、サメ、さん?」

しかし起き上がって見た異様な光景にフィアの頭は混乱する。
上着を脱いでブーツまで何故か脱いでいるクラサメに思わず疑問符を飛ばすが。

「え?え?」

そのまま有無を言わさず布団を捲ってフィアの隣に入り込んでくるクラサメ。益々フィアは混乱するが、徐にぎゅうっと抱き締められて、あたたかいクラサメの胸に額がくっついた。

「く、クラサメさん?」
「これなら、休みながらフィアの看病も出来るだろう?」

ふっと笑った表情がとても眩しかった。
すっぽりとクラサメの腕に包まれて、彼の鼓動がすぐ近くにある。

「寒くないか?」
「ん、ちょっと、寒気はします」

素直にそう言ってみるとクラサメの腕が背中に回される。時折背中を撫でたり、耳の下に唇を当てられたりする。

「んっ……それは、やだ」

拒むと腰をもっと引き寄せられた。

「風邪、移っちゃいますよ?」
「元々は私の風邪だろう?」

お互いにくすくすと笑う。

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