「ちょっと!フィア!?」
「フィアさん!?」
突然目の前で倒れたフィアに、0組の面々は驚いて立ち上がった。
「だから言っただろうがよ、コラ!」
ナインとキングが直ぐ様フィアの元まで駆け付け、ナインの背にフィアを乗せる。
「取り敢えず、マザーのとこに連れていこう」
ナインを誘導するようにエースが教室の扉を開いた。
「私は隊長に知らせてくる」
そんな二人に続き、セブンも心配そうにフィアの背を見つめ出ていった。
「では授業の指示があるまで私たちは」
「フィアが心配で、今勉強なんか頭に入ると思う?クイーン」
その場をまとめようとしたクイーンの言葉をケイトが遮った。それにシンクが力強く頷く。
「……ですよね、私もさすがにそう思いました」
*
「どうやら、風邪みたいねえ」
魔法局、アレシアの部屋。
授業を始める前に倒れたフィアを慌ててアレシアの元まで運んできたナインとエース。
「風邪?」
「もっとスゲーヤバい病気とかじゃねえのか?」
呆気ないアレシアの診断結果に二人は拍子抜けして聞き返した。
「それだったらもっと早く気付いてるわよ。フィアの定期検診は結構頻繁にしてるもの」
「心配ないわ」と言外に告げてアレシアはフィアの額にそっと手を当てた。簡易ベッドに寝かせられたフィアの頬はうっすら蒸気していて苦しそうだ。
「クラサメの野郎のが移ったのか?」
「でも隊長は昨日部屋で安静にしていたんじゃ」
顔を見合わせナインとエースが言った。
そんな二人にアレシアは意味深に笑うとフィアの頭をゆっくり撫でた。
「その隊長さんに聞いてみるのが一番早いんじゃないかしら?」
「「え?」」
まるで狙ったようなタイミングの良さ。
ノックの音も碌に聞こえず、突然部屋の扉が盛大に開かれた。振り返るエースとナインの視界には…
「隊長?」
「クラサメ?」
少し肩が上下しているクラサメと、慌てて付いてきたのかその後ろにセブンがいた。
「そんなに慌ててどうしたの?」
アレシアは煙管を振りながら可笑しそうに笑った。
「フィアを引き取りに来ました」
「あら、一応この子わたしの娘なんだけど?」
有無を言わさず、クラサメは簡易ベッドまで近付いてフィアを抱き上げる。ナインとエースはぎょっとしてそんな彼を見ていた。
「あなたのが移ったみたいだから、ちゃんと看病してあげてちょうだいね。今度無理させたりしたら、……わかってるでしょうね?」
釘を刺すようにアレシアが言い放った。最後は少し鋭い声音で。クラサメは背を向けたままポツリと呟いた。
「肝に命じておきます」
そう言うとそのまま扉に向かう。
慌ててセブンがこのあとの授業はどうするのか問うと、少しの沈黙のあとフォローするようにアレシアが口を開いた。
「じゃあたまには私が魔法について講義しようかしら?可愛い子供たちにね」
有り難いアレシアの申し出に、クラサメは振り返り深く腰を曲げた。
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