RAY OF LIGHT(2/4)

任務に出ているため0組の教室には誰もいない。また、先ほどの放送で興奮した魔導院の連中はほとんどがエントランスホールや噴水前広場に集まってきている為、尚更ここには人気が無かった。

クラサメは教室の扉を閉めるなりフィアをもう一度強く抱き締める。

「クラサメさん」

フィアはぽろぽろと溢れる涙を拭いもせずクラサメを見上げた。すると彼はその素顔を見せていて。

「相変わらず泣き虫だな、フィアは」

涙の溜まる彼女の目尻に口づけた。
そして溢れる涙をぺろりと舐めとる。

「クラサメさんの前でしか泣かないから良いんですっ」

ムッと唇を尖らせてクラサメへ言い返すと彼の薄い唇が湾曲にしなった。
かと思えば。

「当たり前だ」
「んっ」

その尖った唇を食す様に、クラサメの唇が重なった。触れるだけだったそれはゆっくりと深いものに変わっていき、気が付けばフィアは彼の上着を掴んでいた。

「クラ、サメ……さ、ここ」
「0組の教室だな。たまには良いだろ」

先ほど彼がした質問を途切れた息でぶつけてみたが、開き直った珍しい回答が返ってきた。

「たまにはって……」
「たまには、だな」

弾むフィアの息なんて関係無しに、また唇が重なる。教室のスピーカーから今度はカリヤ院長の言葉が流れてくるが、自然と絡まった舌をほどくのが何と無く嫌で。申し訳ないと胸の内で謝罪して、お互いの唇を啄むのに夢中になっていた。

悪い大人だ、そうクラサメは心で呟いた。



*



終戦の喜びを共に分かち合ったその日から、もう2、3ヶ月経っただろうか。

「カトルさんそれ違いますって!」
「何を言う、これが正しいんだ」

終戦と言えどもすぐに何もかもが丸く収まる訳ではない。勿論そこからまた話し合いや論議を重ねてより良い国作りを考えていかねばならないのだから。

「そのコーヒーメーカーはこうやって使うのが正しいんですっ!」

終戦からすぐ、フィアは朱雀代表の1人として白虎の総督府で過ごす日々を送っていた。彼女の他にエミナやタチナミ、その他の武官や上層部の人間も数名。
しかし0組の指揮隊長であるクラサメは魔導院に残ったまま。必然的に彼らは離れ離れにさせられていた。

「これだから元貴族は……」
「貴様はその減らず口をどうにか出来ないのか」

白虎の代表として日々彼女と話し合いや行動を共にすることが多いカトル。
2人の会話はあまり噛み合う事がない。
とは言え、端から見れば仲が悪く見えると言うわけでもなかった。

「はあ……もう2ヶ月かあ」

朱雀を離れて早いものでもう2ヶ月。
カトルと日々喧嘩漫才を続けて2ヶ月。

「なんだ?朱雀が恋しいのか」

フィアが淹れ直したコーヒーを飲みながらカトルは彼女の背中に言った。

「当たり前じゃないですか。今までずっと朱雀のためにー、って戦って来てたんだし。育ったのも朱雀だし」

終戦を迎えたとしても、朱雀に対する愛着が消えた訳ではない。朱雀という国で生まれ育ち、戦って来たのだ。
「それに」とフィアは付け加えてカトルに優しく振り返った。

「カトルさんにだって、いるでしょう?いつだって一緒にいたい大切な人」

ふわりと微笑むフィアの表情に、つられるようにしてカトルもふっと笑った。

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