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ミーンミンミン


「と言うことだ」






心地の良い風を運ぶ季節が過ぎ、サクラの木に止まった一匹の蝉が声高らかに青々とした第二の季節を告げる。
1組の教室。窓の外から聞こえる儚い命の声音を耳に留めながら、フィアは表情を引き締め直した。

「以上が領土侵攻作戦に置ける1組の任務だ。班割りは以前中止した時の通り。コンビネーションの良かった班から最前線に駆り出して貰う」

春先に行った侵攻作戦は朱雀軍の勝利で幕を閉じた。それに1組は一切参加していない。

「今回の任務は演習でも訓練でもない。戦場だ。気を引き締めて取りかかれ」

作戦決行は明日の明朝。
隊長の渇に、1組の候補生達の声が凛々しく響いた。

「今度こそ、頑張らないとね」
「気合い入ってるね」

意気込むサユにフィアは微笑んだ。
今回の任務は彼女が1組に昇級して挑む最初の大きな作戦だった。フィアもそれを知っているからこそサユの気持ちは理解できた。

「ああ、そうだ」

教室の扉から1人、また1人と候補生達が姿を消す。みんな明日に備えてリフレッシュルームなり闘技場なりに行くんだろう。そんな中でフィアは教室の中央の後ろの方の席を視野に入れる。目的の人物はまだ座っていた。椅子から立ち上がってそんな彼の元へ足を向ける。

「クラサメくん」

名前を呼ぶと彼は柔らかく微笑んでくれた。

「フィア」

「どうしたんだ?」と返ってくる声をしっかりと耳に入れ、フィアは笑った。

「明日、よろしくね。足引っ張らないようにするから」

そう、領土侵攻作戦のフィアのパートナーは朱雀四天王とまで呼ばれる彼、クラサメ。二人は先日行った実戦演習での成績が一番良かったらしい。戦場でのコンビネーションを期待され、彼らは明日の作戦で最前線に立つことになっていた。

「フィアがパートナーなら大丈夫だな」
「ええ?そんなことないって」

ぽん、と肩に手を置かれて胸が跳ねた。

「2人とも仲が良いだけじゃなくて戦闘の相性も良いんだね」
「なんか置いて行かれる気分ね〜」

お決まりの2人が此方にやってくる。エミナははあ、と溜め息を吐いて再び口を開いた。

「私なんかまたカヅサとコンビなのに」

そう言えば彼女とカヅサは前回の演習でクラサメやフィアの2人に次いで成績が良かったらしい。イコール、相性が良いと評価されてしまったようで。

「エミナ君酷いな、僕だってやる時はやるんだよ」

項垂れたままのエミナがフィアに抱き付いた。

「私もフィアと組みたいなあ〜」
「わたしじゃなくて、クラサメくんの方がやりやすいと思うけどな?」

エミナの言葉にはカヅサも横で頷いていた。
すると急に、苦笑いするフィアの腰がぐいっと誰かに引き寄せられて。

「フィア」
「っクラサメくん!?」

手の持ち主はクラサメで。彼はぽんとフィアの頭を撫でて言った。

「明日、よろしく」

そう言うと涼しい表情をしてクラサメは教室から出て行った。呆気に取られてぽかん、と口を開けたままのフィア。それは彼女だけではなくカヅサやエミナも同じようで。

「クラサメ君ってあんな大胆だったんだね」

窓から差し入る真夏の太陽が彼らを照らす。じり、じり、と。

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