ノン インプリンティング!(4/6)


「なまえは彼氏作らないの?」発言から暫く。スコールは毎日頭の中だけは忙しい日々を送っていた。
小さい頃からなまえへの思いはどちらかと言えば家族的なものではなかった。憧れと言うか、尊敬と言うか。それがあの日から気付けば彼女を探してしまうような、目で追っているような感情に変わっていた。
そうしてわかったのはやっぱり自分はなまえが好きなんだと言うこと。そして彼女は自分以外にもよく笑っていること。今だって、

(……気に食わないな)

相手は自分より年下の生徒だったけれど、紛れもなく男だ。たまたまなまえを探しにホールに来たところでそんな光景に遭遇してしまう。
なまえへの気持ちを考えるようになって気付いたことはまだあった。自分にも嫉妬心や独占欲があったこと。

「うん、じゃあまたわからなければ聞いてくださいね」

なまえが自分以外の男に笑いかけてるのは気に食わない。だってなまえは…

(俺の……)

言葉は思い付かなかった。
お姉ちゃん?親?先輩?友人?
どれも当てはまらない。
気が付いたら体が勝手に動いていて、

「スコール…?え、ちょ…!」

なまえの腕を無理矢理引いていた。





*





「…ル!…スコール!」

なまえの大きな声でハッとした。
思い切り掴んでいたなまえの腕を慌てて離してやり、肩で息をするなまえに視線を向ける。不思議そうに此方を見ていた。

「どうしたの?急に走り出して…」

乱れた髪をさっと直してなまえは再びスコールを見つめてくる。

「スコール、わたしまだあの子と話してたんですよ?」

知ってる。それが嫌だったから、彼は咄嗟になまえを引っ張って走り出すと言う暴挙に出たのであって。
けれどなまえからしたら何がなんだか理解出来ないこと。不思議がるのは当然で。

「こら、話聞いてます?」

むっと少しだけ不機嫌そうになまえが顔をしかめる。

「スコール、わたしの話…」
「聞いてる」

語気を強めたなまえにスコールは一言めんどくさそうに呟いた。勿論、そんな彼の態度になまえは怒らないはず無くて…

「スコール、あなた…」
「なまえ、」

叱り直そうとなまえが声を発すると、静かにスコールは彼女の名を呼んだ。

「あんまり皆に笑いかけないでくれ」
「へ?」

突拍子も無いスコールの言葉に怒っていたなまえは面食らう。意図せず間抜けな声が溢れてしまい、スコールを凝視する。

「だから、俺以外に笑うな」

何を言っているのだろうとスコールの表情を確認するが、彼は至って…と言うかとても真面目で真剣な顔をしていて、なまえは益々訳がわからなくなる。

「な、…え?どうして…?」

スコール以外に笑ってはいけないなんて、無理な話で。どういう経緯でそんな言葉が彼の口から出てきたのだろうか。純粋に疑問を感じたなまえだったのだが。

「あんたが好きだからだ」

やっぱりスコールの言葉にまた面食らう。

「好き?誰がです?」

なまえのそんな返事にスコールは頭を抱えたくなった。

「俺が」

短くそう返すとまだ状況を理解しかねているなまえはパチパチと目を瞬いていて。小さく溜め息をつくスコール。

「は、え、?スコールが?誰を?」
「俺が、あんた…なまえを」

スコールの言葉を飲み込むように何度かゆっくり反復するなまえ。そうしている彼女を隣で見つめていたのだが、

「スコール!」

険しい表情と咎めるようななまえの声が返ってきてスコールも驚いた。今までちんぷんかんぷんと言った表情をしていたのが嘘みたいに、なまえはご立腹で。

「ちょっとそこに座りなさい!」

半ば勢いで言ってしまった部分もあったが彼は一応一斉一代の告白をなまえにした筈で。なのにどうしてだか嫌なデジャヴに出会してしまった。

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