ノン インプリンティング!(2/6)


例えば昔から一緒にいた異性をある日突然“異性”と意識し始めてしまうなんてよくあることで。

「なまえは彼氏作ったりしないの?」
「今のところ予定は無いかな?」

ここにいる少年(17)もそうであった。



!




気付かされたのは本当に突然で。
薄々自分はなまえのことが好きなんだろうと思う時はあったけれど深く掘り下げたりはしなかった。
幼い頃からなまえは気付くといつも自分の隣にいた。そして笑っていてくれた。時には迷惑を掛けてしまって怒られたり、心配を掛けてしまって泣かせてしまったり。

(なまえに彼氏…)

だからてっきり、なまえは自分の隣にいるのが普通なのだと思い込んでいて彼女の色恋沙汰など考えたことも無かったのだ。
温厚な生活で、自分以外のゼルやサイファーたちなんかにも優しくて、みんなのお姉ちゃん的な存在で。

「えー、作らないの?結構周りにカッコいい子たちいるじゃん」
「カッコいい“子”たち、ね」


なまえに彼氏が出来る。
もしそれがサイファーやゼルだったら。恋人同士、つまりそいつとの時間を大事にするわけで。必然的にスコールと過ごす時間は減るのだ。今は一緒に食べたりしている朝食や昼食だって“彼氏”と食べるだろうし休憩時間や空き時間だって同じだ。

「ああそっか、年下だしね」

なまえと食事を取るのなんてスコールの中では日常になっているし、休憩時間や空き時間になまえが話し掛けてきたり様子を見に来るのも日常。それも子供の頃からの。

「でもほら、なんて言ったっけ?……スコール、スコールなまえになついてない?」

自分の名前が出てきてハッとする。
すっかりなまえとその友人らしき人物の会話を聞いて考え込んでしまっていたがここは廊下なのだった。立ち聞きなんて彼らしく無いけれど、話題が話題だったのでついつい聞き入ってしまっていた。

「それは昔から一緒だもの」
「孤児院?」
「そう。親みたいなものなんだよ」

(親?)

なまえの言葉にスコールはまた思考する。
親、母親、父親。

(……違う)

確かになまえには母親の様に世話して貰ったり話し相手になって貰ったり、思っていることを口に出さなくても何故か通じていたり、親や姉弟みたいな仲だけれどそうじゃない。

「お姉ちゃんの方がしっくりくるかな」
「ああ、成る程」

いや、だから成る程ではなくて。

「そっかー、スコールがおねしょして泣いてる時からの付き合いだもんね〜今さら恋愛対象にはならないかあ」
「っ…!」

なまえの友人の屈辱的な言葉に思わず力が抜けそうになる。ガクンッと膝が折れそうになるがなんとか足を踏ん張らせて堪えたのだが…

「誰かいるの!?」

足に力を入れた時に床と衝突した音が立ってしまった。今度はなまえがハッとして此方に歩んでくる。

(まずい…)

気が付けば足が勝手に動き出していて、なまえがやって来る前になんとか逃げ出すことに成功する。
普段温厚で人当たりもよく柔らかい物腰のなまえなのだが、それ故に規律や約束事、道徳的な事柄には厳しく、立ち聞きしていたなんてバレた日には間違いなくお説教部屋行きコースだ。子供の頃も何度かあったのだ。

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