スプラウト(4/5)


俺の予感は案の定当たった。

「っ…囲まれたか」

なまえと例の男をキラキラと輝くイミテーションが取り巻いている。元の世界では争いが無かったと言うなまえはほぼ戦力にはならない。すなわち、戦うのはリボルバーのような剣を持つ男ただ一人で。いくらそこそこ強いあいつと言えどこの人数は厳しいのではないだろうか。

「スコール…わたし、」
「下がってろ、俺がなんとかする」

なまえを背に庇うが一気に襲い掛かられればそれも意味が無くなるだろう。男が飛び掛かってきた一体のイミテーションの攻撃を剣で受けた時、俺は踏み出した。

「っ!」
「加勢する」

俺の気配に驚いて男は一瞬こちらを見たが、バスターソードの切っ先がイミテーションに向いているのを見て府に落ちなさそうに視線を戻した。

「クラウド!」

なまえに呼ばれた名前が心地好かった。
イミテーションはカオスの駒、つまり俺には牙を向いてこない。倒すのは簡単で、なまえを庇いながらでも十分に戦えた。戦う、と言うよりは猫だましをしている様だったけれど。

「あんた、何のつもりだ」

剣を握ったまま男は俺を睨む。隣でなまえが慌ててそいつの前で手を振った。

「スコール、違うよ、クラウドは助けてくれたんだよ?」
「わかってる。何が目的で…」

険しい表情を刻んだままそいつの眉間のシワが深くなる。俺のことは信用してないようで、まあ、当たり前か。

「目的なんてない」

一度剣を交えているのだし。
こいつの性格からしてカオスの駒の奴を信用はしてくれないだろうし。別に信頼が欲しいわけではない。俺が欲しいのは…

「なまえを傷付けたくないだけだ」
「っクラウド!」

ぐいっとなまえの華奢な腕を引いて引き寄せた。男の表情がもっと険しくなったけれど興味はなかった。

「なまえ!」
「あ、スコール、大丈夫だから、ごめんねちょっと…」

なまえの腕を掴んだまま森の出口へと歩き出した。



***



「クラウド?」

恐る恐ると言った感じになまえが名前を呼んできて、振り返る。俺の表情を見るなりなまえは安心したように胸を撫で下ろしていた。

「良かった、なんかクラウド強引だったから…」

ふにゃりとなまえの頬が緩んだ。
森を抜けて、ただ草原が続くだけののどかな場所。ここならイミテーションやカオスの連中に会うこともないだろう。

「悪かった。…なまえが心配だったから」

ぽん、となまえの頭を掴んで自分の胸に当てる。大人しくなまえはそれに従うように体を寄せてくれる。少しの沈黙が流れた。

「ねえ、クラウド」

ぎゅっと背中に腕が回される。

「わたしね、やっぱり」

その言葉の先。なんとなく察することが出来てしまって、聞いてしまって良いのだろうかと小さな葛藤が芽生えたけれど。

「クラウドが好きだよ」

その言葉を耳で感じて、俺はそっとなまえの顎を持ち上げて。

「俺も、なまえが好きだ」

小さく歪んだその唇に触れた。



もしこれから先、
例え君と向かう道が違ったとしても、


「なまえは、俺が守るよ」



*fin*
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