と降り出した恵みの雨に。
「うそ、いや……いやあっ!!」
「リアよせっ、君まで……!」
ザアアアアアア、
と、血も涙も哀しみまでも、
すべて流してくれたらよかった。
ハルシオン
「だからあんたに頼んでんだろ」
苛立った様子でイヴァンはレオンから視線を逸らした。不本意、と言った表情で彼は椅子をギシリと鳴らす。
「あれから、全く音沙汰無くて、電話もメールも返ってこない。だからって俺らが行ってもリアを励ますことは出来ないんだよ」
だからあんたに頼んでんだろ、と冒頭の言葉に続くイヴァンの言葉。難しい表情のままこの間の任務の報告書、たった今レオンから受け取ったそれに目を通す。
「だからって俺が代わりに行っても」
「あんたリアの恋人だろ?」
ピシャリと言って退けるが少し悔しそうで、これこそ不本意な表情でイヴァンはレオンを睨んだ。
F.B.Iの特殊チームC.I.S.Tと合衆国チームで協力して行ったこの間の任務。バイオテロによりクリーチャーの巣窟と化した研究施設シェルターの安全を確保するべくC.I.S.Tからはリアと捜査官二名、合衆国からはレオンが派遣された。
任務途中、通信を妨害されたり彼らをよく思わないテロリスト側の奇襲にあったりと一筋縄では行かなかった任務。けれどレオンとリア、そしてC.I.S.Tの捜査官二人とチームに別れなんとかシェルターから抜け出せそうだった時、事件は起こった。
***
自分の立場が危ういと感じたテロリストが最終手段とばかりに生産していたクリーチャーをすべて放った。そしてシェルター内の自爆装置を作動させ、更にスプリンクラーからフロア一帯にエタノールの消毒液が巻かれていて視界が奪われそうになる。
『セビリアっ!リカルドっ!』
『リア!レオン!先に行けっ!』
フロアの出口は目と鼻の先だった。
ガラス張りのドアが外の光を写し出している。
『出来ませんっ!どこにいるんですか!?今そっちに』
『リア、駄目よ。間に合わないわ!』
彼らの声は聞こえるが姿が見えない。レオンと二人周囲を見渡すがいるのはクリーチャーや無惨に壊れた瓦礫の山。
『こっちに出口があるの!ダストシュートだと思うんだけど……。私とリカルドはそこから脱出するわ!』
セビリアの声を聞きながらも襲ってくるクリーチャーの攻撃をかわす。そうしてる間にレオンと背がぶつかり合った。
『リカルドっ!セビリアのことは任せたぞ……!』
『ああ!任せろ!』
シェルターの爆発までもう時間は無かった。カウントダウンが開始される。