「ね、レオン」
小さく呼び掛けると彼の手がそっと髪を撫でた。星と星とを線で結んだ時のように、ゆっくりと、愛しむように。
「もっと、抱き締めて?」
体を寄せる。ぴったりと。
「レオンの音、聞こえるように」
黙ってレオンが腕の力を強める。
力強くて、でも優しくて。
壊れ物を扱うようで、でも逞しくて。
じんわりと伝わるレオンの熱は酷く心地が良くて、耳を澄まさなくても彼の鼓動が頬に響いた。
「どきどきしてる?」
「リアといる時はいつもこうだ」
何でも無い風に笑いながら言ったけれど少し照れくさそうだった。さらさらと弄んだ髪に唇を寄せられて、しっとりとキスを落とされて。
夜の匂いに混じってレオンのシャンプーの香りが鼻腔を掠めた。
「リアだって、大変そうだな心臓」
「どきどきし過ぎで死んじゃうかも」
するりと大きな手で頬を包まれて、ひんやりとしていた肌が暖められる。心地の良いメロディーみたいなレオンの体温に溶かされてしまいそうで。
「じゃあ離れるか?」
「離してくれるの?」
くすりと笑われる。
「冗談、逃がさないさ」
「ん…っ…」
包まれていた頬を固定され、噛み付くようなキスが降ってきた。地に注がれる流れ星みたいな。幾つも幾つも降り注いで来るような。
「空の星に嫉妬しそうだ」
「ど、して…?」
少し荒くなった呼吸のまま問う。
ゆっくりと瞼に口づけられ、暖かい親指が体温を持った唇をなぞった。
「リアに熱心に見つめられて、羨ましいよ」
「な、…もう……」
馬鹿じゃないのかとあしらおうとしたのだが、なんだか寂しそうな瞳で見つめてくるものだから罪悪感が湧いてしまう。何も悪いことなどしていないのに。
「わたしだって、レオンが一番輝いて見えてます」
指先でレオンの胸をなぞり返した。
「かっこいいし、優しいし、たまに少し意地悪だけど…。だから、レオンが眩しすぎて見つめられない」
言ってて気恥ずかしくなってくる。
レオンこそクサイ台詞でも何でも似合ってしまうけれど、自分はガラじゃない。普通の日本人だし。絶世の美女とかでもないし。
「レオン…?」
反応が返って来ない。変なことでも口走ったのかと心配になってレオンを見上げてみる。すると、
「今はダメだ」
「え!わっ、」
ばっと視界をレオンの大きな手が覆う。
突然暗くなった視界に驚いてぎゅっとレオンの腕を掴む。
「ちょ、レオン?見えないですよ!」
「見なくて良い」
少し声音が狼狽えていた。
見つめてくれと言ったり見なくて良いと言ったり、まったく彼はいったい…
「……もしかしてレオン、」
「っ……」
無理矢理大きな手を退けてひょっこりとレオンの表情を伺おうとすると顔を逸らされた。
「あー!今照れてましたね!」
「…照れてない」
自分の口元を今までリアの視界を遮っていた手で覆う。この反応は完全に照れている時の反応だ。
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