瞬くシリウス、胸を射止めて(3/5)

「風邪引くぞ」

仰いだ空の星たちを瞼に焼き付けて、静かに目を閉じているとふわりと心地良い香りに包まれる。

「レオン」
「起きたらいないから、どこにいったのかと思っただろ」

少し拗ねたような口調。
背中からレオンの体温がしっとりと混ざり込んできて、頬が綻んだ。

「レオン、あったかい」
「寝起きだからな」

今まで暖かい部屋で毛布に包まれて眠っていたレオンの体はいつもより暖かかった。逞しい胸板にそっと頬を寄せる。すっぽりとレオンの腕に抱き締められて、夜の空に奪われていた熱が戻ってくる。

「なんでバルコニーなんかに?」

しっかりとリアを包み込みながら不思議そうにレオンが問う。ああ、彼はまだ気付いていないんだ。勿体無いな、なんて笑いながら心で呟いたらレオンの表情が更に不思議そうに変わる。

「リア?」
「あれです、あれ」

焦らすように固有名詞を使わないで言って空を指差す。リアの指に習ってレオンは空を仰ぐ。

「星、…か」

一瞬レオンの瞳が大きくなる。
煌々と輝く星たちの多さに、少し驚いたのだろう。少しの間があってぎゅっと抱き締められた。

「珍しいですよね、ダウンタウンでこんなに綺麗に見えるのは」
「そうだな、空気も淀んでるだろうし」

二人で暫く空を見上げていて、不意にレオンに手を握られる。指と指が絡められて、俗に言う恋人繋ぎ。一回り以上も大きなレオンの手が小さなリアの手を覆う。黙ってそんなレオンを見上げると、レオンの顔の横にも小さな光を放つ恒星が見えた。

「レオン?」

見上げたレオンは真っ直ぐにリアを見つめていて、暗がりでもダークシアンの瞳に自分が写っているのがわかった。

「星見なくて良いんですか?せっかくこんなに綺麗なのに」

自分の顔なんて毎日見れるというのに。
それに比べてこの星たちは、明日には見えなくなるかもしれない。少し雲が多くなれば勿論のこと、雨なんか降れば見れないだろう。僅かな気候の変化で消えてしまう程デリケートで儚いものなのに。

「見てるさ」

レオンは薄い唇をしならせて笑った。
見てると言う割には相変わらず彼の視線はリアに降り注いでいて、まるでテレビや博物館だけで見たことがある幾つもの流れ星の様に。

「見てな…」
「リアは、」

唇にレオンの人差し指を当てられて言葉を遮られる。

「俺の中で一番輝いてる星だから」

かあっと頬が熱くなった気がする。
何を素晴らしくクサイ台詞を…なんて思ったけれど相手がレオンだと何故か違和感が無くて。寧ろ少し嬉しくて。心臓が弾んだ。

「どんなに明るく輝いてる星空より、君の笑顔の方が最高に綺麗だ」
「っ、も、ばかれおん…」

蒼白く輝くシリウスの様なシアンの瞳を見ていられなかった。きっと多分、眩しすぎて。恥ずかしさからではない。
朱に染まる顔を隠すようにレオンの胸に押し付ける。腰を引かれて体が密着して、二人の間に風が入るのを拒んだ。

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