『明日も見えるかな?』
「明日も見えるかな」
こんなにはっきりと星が見えるのは本当に珍しかった。只でさえ都会のダウンタウンは人工的なネオンが溢れていて、百万ドルの夜景も綺麗だけれどやはり自然の生み出した力には勝てない気がする。
出来るなら髪も乾かさずに寝てしまうほど疲れている恋人と一緒に見てみたいものだ。
『秋から冬の間は空気が綺麗だから、晴れの日なら見れると思うよ』
「でも、起こすの可哀想だしきっと疲れてるだろうし、ね」
せっかく毛布も掛けてあげたのだし、今頃一人ぬくぬくと暖まっているに違いない。もう少しだけ星空を堪能して、また明日一緒に見ればいい。
リアはもう一度空を仰ぎ見る。
『じゃあまた一緒に見れる?』
「昔は一人じゃなかったかな」
指でデタラメになぞった星を正してくれる人がいた。オリオン座の星の名前も教えて貰った気がする。朱く光るのがベテルギウス、としか覚えていないけれど。
彼は近所に住むいくつか年の離れたお兄ちゃん…
『うん、見れるよ』
「だったっけな。同級生だっけ?」
曖昧な記憶に小さく苦笑い。
また一緒に星を見ようなんて約束した気がするけれど、確かあれから自分が引っ越ししてしまったか向こうが引っ越したか、なんだったか覚えてないが理由があってその約束は果たされていなかった。
純粋な子供心から、また一緒に星を見てずっと一緒にいようねなんて可愛らしい約束をしたものだ。
『また来年も、大人になってからも、一緒にお星さま見れる?』
「ずっと一緒かあ」
ずっと、永遠、永久、
似たような言葉を並べてみて指で三角形を描いてみる。ずっと、すなわち永遠を約束するだなんてとてもロマンチックでなんて儚い関係だろうか。
例えるならこの夜空に浮かぶ星のよう。
『うん、リアとはずーっと一緒だから大人になっても、一緒に…』
「ウソつきー」
永遠とは、自分が想像出来る先までの未来の事を言うのか。はたまた想像出来ない先の未来までの事なのか。いまだにそれが何なのかわからない。
「ちょっと思い出したじゃん」
懐かしい星空を眺めているうちに記憶が幾つか降り注いできたようで。そういえばそのお兄ちゃんに子供ながらに淡い恋心を抱いていたな、とか。大きくなったら結婚しようね、とか。在り来たりな話を思い出した。
「元気かな…」
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