bloody weekend.(3/4)

「うん…」

けれどリアはそんなレオンの申し出にあっさりと乗って見せる。錠剤を用量分口に放ってレオンを見上げて待つ。まるで雛鳥が親鳥から餌を貰うのを待っているようだ。レオンは慌ててペットボトルから水を含んでリアに口移ししようとしたのだが、それよりも早くリアがレオンのネクタイを引っ張って唇を重ねる。

「っ……」

レオンの咥内から水を奪うように口づけて、渡り切らなかった水がポタポタと垂れる。そんなことも気にせずリアは錠剤を飲み込んで更にレオンにねだるように唇を啄む。
珍しく積極的なリアに驚きつつそれに応えて舌を絡めて深く口づけるレオン。何度も何度も角度を変えて舌を吸う。リアの力が抜けてきてレオンはゆっくりリアをベッドに押し倒す。

「んぅ…」

息苦しくなってきたところで二人の唇が少し離れた。鼻先のくっつく距離でレオンが問い掛ける。

「今日は随分甘えん坊だな」

するとまた首に腕を回してリアが抱き着いてくる。隣に寝る様促されてレオンはリアの隣に添い寝する形で横になる。

「リア?」

レオンにぎゅうぎゅうと抱き着いて更には腰を押し付けてくるリア。一瞬レオンはセックスアピールなのかと邪なことを考えたがすぐにそれが何の行動なのか理解できた。

「リア、もしかして」

レオンの声にリアは彼をじぃっと見つめる。大分辛そうな表情で。

「生理か」
「………」

リアが全力で首を縦に振った。
成る程、と納得のレオン。
そういえば買ってきた薬の箱に「頭痛・生理痛に効く」とか書いてあったかもしれない。今まで付き合った女性の中にも月経痛が酷いと言っていたのはちらほらといたのだが、リアはどうやらその中でダントツに酷いようだ。さっきから言葉すら紡げないようだし必死に抱き着いてくることしかしない。

「だったら…」
「わっ、」

今度はレオンがリアの腰を思い切り引き寄せた。強い力で腰を掴まれて、骨盤が安定されてるのか少し痛みが和らいだ気がする。更にレオンは反対の手で背中から腰に掛けてを暖めるように撫でてくれる。

「きもちいい…」

下腹部に重く鈍く走る痛み。腰や背中から暖められてほんの少し楽になる。


「少しは楽になったか?」
「うん…さっきよりは」

まだまだ全然痛いことに代わりは無いのだが、気持ち的にレオンが傍にいるのと暖めてくれている事で楽になる。リアはいっそう強くレオンに抱き着いた。

「相当痛いみたいだな、リア」

心配そうなレオンの声が耳に入る。背中から腰を撫でる手は一定で、気持ちがいい。

「子宮の筋肉がぎゅうぎゅうめちゃくちゃ動いてる感じです…」
「…残念だけど俺には一生解らないな」

レオンが苦笑いする。残念では無いだろうに。むしろ幸せなことだ。

「他にどうしたらいい?」

レオンの顎が頭のてっぺんにこつんと乗っかってくる。これだけしてくれてるのに彼はまだ手助けをしてくれるらしい。そんなレオンの優しさにリアの胸がじんわりと暖かくなる。

「ん…暫くはこうしててほしい…」
「これだけ?」
「…可能なら一思いに殴って気絶させてくれるか、武士らしく切腹に付き合ってくれると嬉しいんですが」
「おいおい…」

冗談だろと苦虫を噛み潰したような表情のレオン。最愛の恋人を殴ったり切腹だなんて出来るはずがないだろうに。それでも冗談が言えるぐらいにリアが落ち着いたのだとわかって少し安堵する。

「結構本気で切腹したくなるんですよ…切ったらなんか楽になれそうで…」
「いろんな意味で楽になるけど…それは言うまでもなく却下だ」

ぷっと二人とも吹き出して笑う。
お互いに表情は見えていないけれど、多分二人とも穏やかな顔をしていることはわかっていた。リアはレオンの胸に顔を埋める。

「薬も飲んだし、寝てもいいんじゃないかリア?」

そう言うと背を撫でていた手をトントンと一定のリズムで叩くように変えるレオン。

「え、でも…」
「眠った方が楽だろ?寝て少しするまでこうしててやるから」

レオンを見上げると優しい双眸がリアを映していて、やっぱり安心してしまう。そんな彼の言葉に甘えて、少ししてからリアは意識を手放した。

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