bloody weekend.
家に帰ると室内は真っ暗だった。
玄関だけなら未だしも、先に見える扉の奥のリビングもどうやら真っ暗のよう。廊下の灯りを点ける。
「リア…?」
そんなに具合が悪いのだろうか。メールで言われた通りの名前の薬を購入して出来るだけ急いで帰って来たレオン。帰りに薬を帰ってきてと言われてリアの体調が思わしくないことはなんとなくわかっていた。けれどここまでだったとは。
(と言うか、いるのか?)
取り敢えずリビングに向かわず先に寝室の扉をそっと開けた。長細い廊下の光が扉の隙間から真っ暗な寝室に差す。その長細い光に照らされて、僅かだがベッドが膨らんでいるのを確認出来た。レオンはそっと中に入りベッドサイドに歩み寄る。
「………」
「リア、」
そっとしておくべきかとも思ったがせっかく薬があるんだから飲んだ方が良いんではないかと思い、レオンはリアに呼び掛ける。髪を梳くように頭を撫でて額をくっ付けるとリアの目蓋がうっすらと開いた。
「リア、だいじょう…っ?」
大丈夫かと皆まで言う前にグイッと首を引かれて前につんのめりそうになるレオン。反射的にベッドに手を付いてなんとかそれは免れた。暗闇に目が慣れてきて見てみるとリアが物凄い力で自分に抱き着いてきていた。
「、リア?」
「…れおん、…おかえり…」
か細い声が耳元で聞こえた。
いつもの彼女と違うとても頼りの無いその声にレオンの不安が一気に広がる。
「リア、大丈夫じゃないんだろ?病院行った方が…」
「だいじょぶ…」
いや、全然大丈夫じゃないだろうと内心で突っ込んで取り敢えずリアを抱き返してベッドに腰掛ける。
「大丈夫じゃ…」
「れおん、くすり…」
またも言葉を遮られていっそう強く抱き着かれる。言われてレオンは薬の箱を開けて差し出す。リアはそれを受け取るとじっとレオンを見た。
「みず…」
「ああ、今持ってくる…」
そう言ってキッチンに向かおうと立ち上がるレオン。しかしベッドを離れようとしたレオンは今度は行動を遮られてしまう。腕を引かれてまたリアに抱き着かれる。
「リア?」
「離れたらやだ…」
ぎゅうぎゅうとレオンの腕を目一杯抱き締めるリア。レオンは苦笑してそんな彼女の頭を撫でて宥める。
「離れなきゃ水持ってこれないだろ?」
優しい声音でリアに囁くレオン。
けれどリアはふるふると懸命に首を横に振った。そんな彼女を見て可愛いなあ、なんて流暢に考える。
「でも…」
「すぐ戻ってくる、だから、な?」
子供に言い聞かせるみたいな口調で優しく微笑んで見せるがリアは首を縦には振らない。まったくどうして今日はこんなに可愛いんだとレオンは頭を抱える。どうしようかと思ったところでちょうどリアに渡した薬の入っていた袋を思い出す。確か小さいサイズのミネラルウォーターを一緒に買ったんだった。水ならそれで良いじゃないかと袋を漁る。
「リア、ほら。」
「ん…」
ペットボトルの蓋の部分を掴んでリアの前でぶらぶらと振る。それに気付いたリアはほっとした表情で薬を押し出して取り出す。
「飲ませてやろうか?」
冗談でペットボトルの蓋を緩めながら問い掛けてみる。弱ってるリアに冗談だなんてなかなか自分も捻くれた性格だなとすぐに苦笑いするレオン。