Kittys fangs removed.(2/3)

やはりと言うか当たり前と言うか任務地へ向かうヘリの中彼女は一ミリもこちらを見てはくれなかった。俺の顔ちゃんと覚えられているのだろうか。任務中間違って違う奴についていかないだろうか。

「意味もなくジロジロと人の顔見るのやめてもらえます?」

せめてこちらを睨んで言うならまだしもこっちをまったく見ずそう言った彼女は後頭部にも目がついているのではないだろうか。しぶしぶ視線は逸らしたがやはり気になってちらりと見てしまう。
艶やかな綺麗な黒髪は日本人が天から授かったものかとても綺麗だった。大きな目を縁取る長い睫毛も白い肌に映える少し色づいた唇も。

「リア」
「気安く名前で呼ばないでください」

女性にそう返されたのは初めてだ。
暇なヘリの中やる事は窓の外を眺めるくらいしかない。彼女は窓の外に眺める以外の何かを見出だしているのだろうか。


「あー……失礼、Ms.卯月、君はなんでここに入ったんだ?」

特に意味は持たない。
他愛もない会話のつもりだった。

「任務に関係無い事はお話出来ません」

しかしこの嫌われよう。
初顔合わせの時に遅刻したぐらいしか嫌われる理由は持ち合わせていないのだが。ああ、それがまずかったのか。
結局ヘリを降りるまで彼女は一秒だってこっちに見向きもしてくれなかった。





*





《リア、次の確認ポイントの異常が無ければ任務完了よ。引き続きレオンと協力をお願い。》
「了解しました」

ディスプレイ越しのハニガンとはとても気が合いそうなリア。ただハニガンの方が少しだけジョークは通じそうだ。リアの方はまったくと言った感じだしな。
ただ彼女の手際の良さや臨機応変さは現場慣れした俺でも認めることが出来た。そこは日本人気質の器用さや集中力の高さから来てるんだろう。

「次のポイントが異常無ければ任務完了です。ぼさっと立ってないでさっさとついてきてください」

ただその切れ味抜群の毒舌はどうにかならないか。俺の中の日本人女性の概念が見事にスパスパ切られていく。亭主関白ってのはアメリカ人が都合よく訳した日本語なのだろうか。
俺たち二人が来たのはアンブレラが秘密裏に使っていたと思われる研究所の地下施設。報告によると最近中で何かが内部爆発したような振動があったらしい。爆発によって研究所内にあったまだ調べられていないウイルスが研究所から漏れでもしたら大変なことになる。施設内を一ヶ所ずつ回って異常が無いか調べるのが俺たちの任務だった。

「ここです」

しかし任務の最中まるで雑談のひとつも無し。どうしたって彼女は任務に関係の無いことは答えてくれないし笑ってさえくれない。
念のため手にした銃を構えて扉を蹴り開ける。保管室のようなそこは一番ウイルスの漏れが心配されるポイントだった。シャーレや試験管に培養液、様々なものが無造作に陳列されている。

「異常無いですね。空気汚染度はっ」

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