彼の強がりと僕の罪悪感


お前は海を見たことがあるかと聞かれて
答えずにいたら見に行こうかと言われた
それを遠慮した降りをして断ったら
お前は空を見たことがあるかと聞かれた
当たり前だろうと言えば
海とよく似てると思わないかと言われた
そうは思わなかったが軽くそうだなと返したら
彼は気に入らなかったようで
少し不満そうになり
でもすぐにまた笑顔に戻ったので
なぜか優しく笑っている彼に罪悪感だか嫉妬心だかよくわからない感情が浮かんできて
熱に浮かされた時の様にぽつりぽつりと
ではお前は赤い海を見たことがあるか
赤い空を見たことがあるかと聞いたら
彼は黙ってこちらを見て
変わらず優しく笑って一言「もちろん」と言った
熱に浮かされた頭が優しく冷めた
周りの空気に色が付いて
心に詰まっていたものがどこかに溶けて消えてゆく
それはまるで彼の笑顔の儚さに似ていて
(ああ、そうか、)


と僕の罪




(お前もまた悲しいのか。)



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