成り代わる 「ねえ三郎、君、僕が死んだらどうするの?」 余りにも唐突。 こぼれそうな丸い瞳をじいとこちらに向けて、まるで鏡のような彼――写しているのは私だが――は、ふと思い付いただけであろう疑問を口にする。 「…君が、死んだらって?そんなのそりゃ悲しすぎて――考えたくもない、君は僕の全てだ」 他の誰か、例えばそれが女であれば尚更であろうが、うっとりするような歯が浮く台詞。 愛しい雷蔵を思えばこそ出たものだ。嘘ではない。 しかしそんなもの彼には通用しない。 ロマンチックの芽を気付かずにくしゃりと踏みながら、雷蔵は笑った。 「あはは、そうじゃなくて、顔」 「顔?」 「変えるでしょう?だって僕が死んだらその先、絶対に君が三郎だってバレるじゃない。」 ああ、そういう。 馴染んだ顔。もう長いこと使わせて貰っている。 けれどそれは別に、正体を隠すために変えている訳ではない。 彼に憧れ焦がれ彼に成るべく彼の姿を写したのだ。 (これが彼にはわかっていない) 確かに暫くは雷蔵の顔から変えるつもりはなかった。 (君はまだ私のことをわかっていない) (君が、死んだら、私は) 「君が、死んだら」 「うん」 (雷蔵が、死ぬ) (わたしをのこして?) 「…いや。君は死なない。少なくとも私が死ぬまで、 私は君を死なせたりしない――」 成 り 代 わ る (ああ、愛しい雷蔵、嬉しそうな顔) (その言葉の意味を、その先に紡ぐ言葉を、君は理解出来なくて良い) ---------- 三郎はもし、もしも雷蔵が自分より先に死んだら雷蔵のふりして生きてく そんで死ぬまで誰にもバレない 実は雷蔵は全部わかってるとかだったらいいな(^▽^) |