幻のようだ


「こんばんは。」



ただ怪しげにゆらゆら流れる雲のように何気なく雑渡は語りかけた。
学園に来た理由が単に暇だったのか、
何か意図があって会いに来たのかは解らなかったが
おそらく前者だろうな、と口の中でだけ言って「こんばんは。」と気の抜けた返事を返した。

「元気?」
「はあ、まあ」
「それは良かった。」

包帯でぐるぐる巻きになっている顔ではほとんど表情など解らないはずなのに
彼に関しては鮮明にその笑った顔やら困った顔やらが読み取れた。
風が吹く度に彼の足下の枝は揺れる。

「何か用でも?」

「うん。少し彼と話がしたいなぁと思ったんだ」

(善法寺先輩目当てか)
ざわざわと木々がうるさいはずなのに何故か彼の声は直接頭に響くように届く。
まるで幻術にでもかけられてるようだ、なんて考えればおかしくてたまらなかった。(ああ騒がしいなあ今夜は)

「まあ、目を瞑るので、今のうちに行っちゃってくださいよ」
「いいの?はは、君は頭がいいね」
「あなたは頭がいいのに馬鹿な真似をしますね」
「うん。でもこういうのが好きなんだ
じゃあね鉢屋くん。」





二度と会いたくないなぁ、と思いながらひんやりとした布団へ倒れ込んだ。




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承花を書けと言われたのにどうしてこうなった
興味関心の薄すぎる鉢屋おいしい



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