長編 | ナノ

月曜日の朝というのはどうも気だるいものである。
今日も今日とて鬱々とした気持ちを抱え、私はもう何度目かもわからないため息を吐きながら学校への道を歩いていた。

あの校内案内から数週間が経とうとしていた。
それ以来影宮くんとはこれといった接点も無く、教室の両端同士という遠い距離感の中で何かしらの認識が変わるわけもなく。訊きたいことも訊けずに、ただのクラスメートとして過ごしていた。

「おはよう奏!」
「おはよーう」

「おっ、藍塚うっす!」
「うぃーす」

掛けられた声に何とはなしに合わせ返事を返しながら席に着く。すぐ側の窓を開け放つと風が滑り込んだ。空は憎いほど青い。
長い一日が始まると考えると、この上ない億劫さが肺を痛くした。
2限目の終わり、憂鬱さがついに限界値に達した私は友人の肩に軽く触れる。

「ごめん、上手く誤魔化しといて」





軋んだ音を立てる扉を開くと、射し込んだ光に目を細めた。今日も私しか居ない屋上。元よりこの学校は真面目な人間が多いのだ、私のように屋上でサボろうなどとは毛ほども思わないだろう。改めて自分の怠惰さが浮き彫りになった気がして気分が悪い、振り切るように空を仰ぎ見ると上から下へとグラデーションの掛かった青色が頭上一杯に広がっていた。

ここが、好きだ。頬を掠める柔らかい風が吹き、周りに誰一人として自分を邪魔する人間がいないこの場所が。
流れる雲を目一杯眺めていると、なにもかもを忘れて眠気を誘われる場所だ。屋上は私にとって絶好の昼寝場所でもあったのだ。

「今日は一段と綺麗だ」

小さく感嘆の言葉を溢して瞼をゆっくり閉じた。




2010/11/26
2013/5/16 修正
舞台は烏森じゃないですよ



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