10/23 One hour Writting!!
10/23
「人形」「伽藍堂」
「愛は永遠に、裏切りはすぐそこに」
>>「鐘の音」
>>「円卓の神父様」
このリヴィディシウムでは、月に一回鐘が鳴る。
満月の日の深夜、リヴィディシウム中の教会の鐘が鳴る。その真意は知らない。たぶん、聞いた所ですぐ忘れるけれど。
その日、僕らは全員招集が掛けられる。表向きは街の護衛。その裏は…特に無いし、知らない。
深夜に鐘の音なんて、ご近所迷惑だなーひょほー。
「がーれすー」
「何だよ、エレック」
しかし夜の街は暇だ。
誰もいないし、何も無い。鐘の宴は終わり、もう皆が寝静まった頃だ。物が動く音は聞こえない。在るのは自分達の声と、影だけ。
「ひまー」
「仕事しろ、馬鹿」
「おひょー」
「煽んな」
鐘が鳴る日は全員が駆り出される。街の護衛をする為に。
無粋な輩を狩るのが仕事。僕らの、『円卓神父』の、仕事。僕らはお伽話『円卓の騎士団』の名を借りた自警団。秩序の枢機卿直属の警備団、とでも言おうか。
そもそも何で鐘の宴の日に全員で街の護衛に駆り出されるのか正直、知らない。別に警備なら毎日してるのに、外にいる連中を呼び出してまで全員で国全土の警備をするなんてそれ相応の理由がある、とか思ったけど知らないから良いや。
「がーれすーーー」
「五月蠅い」
「ジェイミー様ァ」
「仕事サボんなよ」
「サボんないしー」
だるだると双子の弟であるガレスに絡みながら、人っ子一人いない夜の街を見回るのだ。ああ、何て面白みに欠ける仕事なんだろう。これならジェイミー様の御尊顔を拝んでいる方が遥かに楽しい。いやむしろそれ以上に楽しいことは無い。ジェイミー様を拝む為に生きたい人生だった。
「ジェイミー様ハァハァ」
「エレック、キモイ」
「エレッ君ショック」
ジェイミー様ジェイミー様と口から漏らせば、隣にいるガレスに睨まれた。いやだって好きなものはしょうがないじゃないか。口から出るんだもん。
「あー、しっかし何も無かったねー」
「何も無いのは良い事だろ」
「暇は人を歪ませる。キリッ」
「キリッじゃない。自分で言うな」
「ヘリオトロープ組は特に何も無かったみたいだな。他に報告事項は」
日も明けて、隊舎に戻って来た。
隊長補佐っぽい感じのガウェインが隊長の代わりに隊員の報告を受けている。いつもの光景。
「カフェニキー、暇は良くない」
「暇じゃない、仕事だ。それから、カフェニキじゃない、ガウェインだ。いい加減にしろ」
「兄さんたいちょーひょほほーーーーーー」
「おい、待て!隊長にそんな無礼な真似を―――ッ!!」
ガレスの目の前を、エレックとガウェインが喧しく走り去っていく。
ああ、今日も胃が痛い任務だった。エレックといると胃が痛くなる。別に、全然楽しくない訳でないが。
「はー…」
「ため息は幸せが逃げるよーーー」
思わずため息が出た。
円卓の神父、というのはどうしてこんなにも変人が多いのか。声を掛けて何処かに行ってしまったランスロットも、その変人の一人だ。ああ、にまにまと笑った顔が目に障る。
「疲れた…」
「ジェイミーさまぁあ!!」
遠くで双子の兄エレックの声がした。
どうせいつものジェイミー・エドキンス卿のストーキングだろう。後で捜しに行くのが面倒だなぁ…。本当に、今日は疲れた。
暇が人を駄目にするとお前は言ったが、お前は俺の胃を駄目にすると思った。
疲労の籠ったため息が伽藍堂の室内に、霧散して消えた。
End.
15/10/23
ガレスきゅんの胃が痛くなる話。
ひょほほほ。
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