10/16 One hour Writing!!

10/16 ワンドロ/ワンライお題
【その引き金に指をかけ】
【静寂と硝煙の先】
【素数】

>>【終着駅】
>>【宛名】



いつか来る終わりまで、
あなたの温もりを感じていたい。

崩れる程に重なった宛名の無い言葉も、いつかあなたに渡せる日が来るでしょうか。




「カトくん、」


カトくんと呼ばれたキャラメル色の髪をした青年は振り返る。


「なに、ルフト」


桜の舞う道で、どこか既視感を覚えながらその笑顔に言葉が詰まる。
言いたい言葉は、いつだって出て来てはくれないもので。いつもいつももどかしさに身を焦がすのだ。


「…えと、あの……」


自分で呼んでおきながらその後の言葉が紡げないという何とも情けない状況に相変わらず溜息が出る。ただ目の前にいる彼はそんなことは気にしない、というようにつらつらと言葉を吐いていく。


「ルフトー、好きだよ」

「……わ、わたしも、です」


そんな言葉をすらすらと吐けるのはすごいことだと思う。
好意を受け取ったことが無いわたしにとっては好意を表す言葉さえ碌に知らない。だから、余計に。
でも、どれだけ好意の言葉を貰っても、わたしはそれを半分も返せていないこの現状が、正直嫌で嫌で堪らなかった。こんなに好意を貰っているのに、迷惑を掛けているだけのような気がしてならないのが、酷く心苦しい。


「あ、あの…」

「ん?」

「………すき、です」


きみの言葉をおうむ返しするだけの日々から、いつか抜け出せる日が来るだろうか。自分なりに、愛してると、伝えられる日が来るだろうか。
本当は、誰かを好きになったのが初めてで、こんなに何かを伝えたいと思うことも初めてで。何もかもが初めてなこの状態で、一体何から伝えていいやら分からないけれど、


この人と遠くに行ってみたいと思った。誰もわたし達を知らない、わたし達も何も知らない、どこか遠くへ、行ってみたいと思った。


ながいながい線路の向こうまで、
いつか来る終着駅まで、
きみの温もりを感じながら揺られていたいと思った。


それをカトレア君に伝えたら、どんな顔をするのかな。


End.
15/10/16
転生した後のルフトの心中もだもだ話。
面と向かって好きって言えないけど、でも好きなのは紛れもない事実だから。






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