吸血鬼にした理由



リヴィディシウムが出来る前から生きてるから人間に迫害されて育って、人間を憎んで、でも愛したのは皮肉にも人間だった。
『至極、至極馬鹿な男だったよ。それを失くすのが惜しいだなんて、それ以上に馬鹿なわたしだった』




クローデットの愛した人は、クロードの父親だった。
彼は人間で、結局は人間の女と結婚してしまったけれど、不思議と縁が在った。
疾く逝く彼らを見送って、忘れ形見を吸血鬼にした舞台の裏側は、親の身勝手な願いだったという訳だ。


「君と、同じ名前にしたんだ」
『不完全、を子供に冠すのか』
「人間はね、不完全なんだよ。君達のように個々が大きな力を持っている訳ではないんだ。尤も、」
『だからこそ助け合える、と。幾度と聞いた主の言葉だ』
「…そうだね。不完全だからこそ、この子を、どうか頼む」
『子供など育てたことのないわしに子供を託そうと言うのか?主も中々酷な男だ…』
「違う。そうじゃ、ないんだ。君に頼みたいのは、」


―――どうかこの子を、クロードを、吸血鬼にしてほしい。



『…正気か、貴様』
「近しい日に、私達家族は死に逝く。でもどうか、この子だけは救ってやってほしいんだ。取り巻く死から解放してやってほしい」
『子供の運命が如何に過酷だったとしても?』
「それでも、だ。我が子の幸を願う愚かな親の、最期の頼みだ。…すまない」
『…主は、馬鹿な男だ。尤も、それ以上に愚かなのは、わしの方なのだろうな』


―――その言葉、今この場を以って承知した。


ただ主は、聖職者と吸血鬼の血が相反するものだと知っていて、それをわしに告げたのか。半人半鬼の運命は至極、過酷なものぞ。



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