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ご、ゴメンナサイ…

「ご、…ご、ゴメンナサイ…」

誰かこの状況を助けてください。
まさかこんなことになるなんて思いもよらなくて。
ちょっとふざけてただけなんです…。

目の前に無表情で見下ろしてくる彼が怖すぎて、蛇に睨まれた蛙。
目を合わすこともできない。

誰だよ部活前に目隠し鬼しようなんて言い出したのは!
あ、我らが主砲のキャプテン木兎先輩だ。
逆らえないやつでした…。



「なぁ!午後練始まるまで暇だから目隠し鬼しよーぜ!」

「「はんたーい」」

数名の反対を受けるも、やりたいとだだコネ始めた彼を誰が止められましょうか?
唯一、彼を止めれる人がいるとすれば赤葦くん。
ただ一人。
でもその彼は絶賛お昼寝中。
風通りの良い窓辺でスヤスヤとうつ伏せになって寝ていた。
いや、もしくはこの面倒ごとに巻き込まれたくなくて寝たフリをしていたのかも知れない。

「目隠し鬼じゃなくてもよくなーい?」

雪絵先輩の提案にも耳を傾けず、頑なに目隠し鬼を主張する主将。
多数の反対派が折れるのは光の速さ。
結局なんだかんだ言っても、みんな少しは楽しそうなんて思ってたりして。
やる気を出してみんなでじゃんけんすれば、話を合わせていたかのように一人の負けが決まる。

「じゃあ最初はなまえが鬼な!」

「え…嘘ですよね?」

ニコニコ笑った木兎先輩にタオルを巻かれ視界を奪われる。
本当に何も見えなくて、立っていることさえ不安になる状況。
なんで高校生にもなってこんなことしてるんだ…?
今さら疑問に思っても遅い。

体育館の真ん中に立たされ十数えてさぁ行きますよ!って時に、遠くからかかる声。


「おーい木兎ー!」


恐らく監督。
ちょっと来い、と呼ばれて行ってしまった先輩に、みんなが「なんだよ」と失笑の嵐。
いや本当になんなんですか。
私目隠しされ損ですよ。


「みょうじ?なにさせられてるの?」


近くで呼ばれた声に距離感もつかめず振り向けば、それは結構な近さだったようで勢いよくぶつかった。
思わず尻餅を突いてしまう。



「っいたたー…、赤葦?だいじょっ………ん、?」



反射的に伸ばした右手が服を掴む。
布越しに人肌温かく弾力のあるものに触れた。
“何か”を理解するより先に、尻餅を突いた拍子にずれたタオルでようやく視界に光が入る。

「みょうじ」

タオルをずらして、もう一度呼ばれたほうへ視線を上げ、かけ、た……


「…っひ、ぅえっあぁぁぁぁ!!!!!!!」


慌てて手を離すし、慌てて距離を取ったし、自分の右手と赤葦くんをすごい速さで交互に見つめてしまった。

私いま、… な に を さ わ っ た !?

先輩たちも言葉無く「げ」といった表情を浮かべてこちらを見ている。
た、助けてくださいよ!!!!!
赤葦くんは読めない表情のまま黙ってこちらを見ていた。

「ご、…ご、ゴメンナサイ…目隠し鬼しようってなって、でも言い出した本人が監督に呼ばれて、わたし取ろうと思って……決して悪気が、…あの触って、ないです!!」

「そこなんで嘘吐くの」

「ひっ、ごめん、おこらないで」

「怒ってないよ」

怒ってないなら寝ぼけてるのか?!
無表情でそんな詰め寄らないで…
無言で差し出される赤葦くんの右手。
私の右手にはまだその感触が残っていて、それを差し出すのはひどく躊躇われたけど、ここでもたつくのも相手に気を使わせるかも、なんてめぐる思考は十分もたついていたけど恐る恐る右手を出した。

出し掛け途中で、向こうからその手を掴んで引っ張られ強引に立たされる。
ぎゅっと強く握られた手は握力の強さを感じる。

「ごめん、本当に」

「そんなに謝るなよ」

「でも…」

まだ握られたままの手が熱い。
私の目を覗き込むように少しだけ顔を近づけた赤葦くん。



「次はお尻から触ってくれる?勃ってない時はちょっと恥ずかしいし」



そう小さな声で囁いた口は愉快そうに弧を描く。

は……?

もはや呆然とする私の手をようやく放した彼は、呑気にあくびをしながら「木兎さんは?」なんてくるりと背を向けた。
手を握られた感触の方が強すぎて忘れかけていたのに、またふと触れた感触と熱を思い出し、私はしばらく放心状態のまま動けなかった…。



「…(勃っちゃったけどね)」




[ ご、ゴメンナサイ… ]

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