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THX CLAP

2020/02/28 更新

※本文の最後に入れるか入れないか悩んで入れなかった部分※



 玄関先でまで「美味かったありがと!」という出水は、本来私の身勝手な都合で呼ばれたことをすっかり忘れているのだろうか。こちらこそありがとうだよ。
 またね、と別れの挨拶を告げ扉に手をかけた出水が「あ、そうだ」と突然振り返る。私は靴なんて履いてないし狭い玄関の式台の縁に立っているから、当然急に手を引っ張られたら土間へ落ちないように手を突っぱねてしまって。
 互いに不意であったとはいえ、これはいわゆる壁ドン。私が出水に覆いかぶさるかたちでの。思わぬ至近距離に互いに目を見開いたまま、きっとこの時、世界は止まっていた。
 悪い、と音無く呟く出水の頬が朱に熟れていく。私も「ごめんね」と笑って離れようとした。でも離すどころかぐっと強く引っ張られて。

「――これはキスしてもしかたないっしょ」

 やわく触れて離れて。おぼろげだった蜜色と視線が合ってはっきりとした双眼へ変わった。照れたように悪戯っぽく笑っている。
 扉から手が離れたのを確認して出水は「シュークリーム、早めに食えよって言おうと思って」だって。そんなこと言われなくても今日中には無くなっちゃうよ。頷いて、今度こそ見送って。しまった玄関扉の向こうで足音が消える頃、脱力するように座り込んだ。

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